夏になると現れる「夏酒」とは?日本の暑さを楽しむ、日本酒の飲み方
日本酒は、秋に収穫したお米を使ってつくられます。冬には「新酒」「しぼりたて」、春には「春酒」、夏になると「夏酒」が出てきて、そして秋がやってきて「秋あがり」や「ひやおろし」。
一年を通して様々な味わいが楽しめる日本酒ですが、今回はその中でも「夏酒」をピックアップして、味わいの特徴やおすすめの飲み方を紹介していきます。梅雨が明けて、本格的に暑い夏がやってきます!日本酒と一緒に日本の夏を楽しみましょう。
「夏酒」とは?
さっそくですが「夏酒」というものに明確な定義はありません。それぞれの酒蔵さんが“夏に飲んで美味しいお酒”として売り出していれば、それはもう「夏酒」なのです。かつては、夏に飲む定番のお酒はビールでした。
ジメジメした暑さのなか、グビグビ飲めるビールの爽快感たるや…! 一方、日本酒はビールやワインなどに比べるとアルコール度数も高く、どちらかというとチビチビ飲むタイプ…。
そこで、夏にも日本酒を飲んでもらえるように、2007年ころから普及したのが「夏酒」です。
青色の瓶を使って涼やかな見た目になるよう工夫していたり、アルコール度数を低くしてスイスイ飲めるように仕上げていたり、ひとくちに「夏酒」といっても、酒蔵さんによってこだわっているポイントが違うのでとても面白いです!その中でも、「夏酒」としておすすめのタイプを紹介していきます。
「夏酒」におすすめの日本酒3選
夏酒の明確な定義はないと紹介しましたが、暑い夏だからこそ楽しめる日本酒の飲み方があるんです。キンキンに冷やして飲むだけでなく、氷を入れオンザロックで飲んだり、炭酸水で割って日本酒ハイボールという粋な飲み方も。
ここでは、夏だからこそ飲んで欲しい!日本酒のタイプを紹介します。
原酒
「原酒」とは、製造工程において加水されていないお酒のことです。一般的な日本酒は、もろみを搾ったあとに加水をしてアルコール度数を15度前後まで下げる調整をします。
そうすることで、味わいのバランスを調整して飲みやすくしているんですね。それに対して「原酒」とは、その名のとおり加水していない搾ったままのお酒のことを指し、ものによってはアルコール度数が20度近くになることも。
そんな「原酒」は、オンザロックで飲むのがおすすめ!氷が溶けても味が薄まりにくく、味わいの変化も含めて楽しめますよ。
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生酒
「生酒」とは、もろみを搾ってから出荷するまで、一度も火入れ(加熱)していないお酒のことです。
多くの日本酒は、酵素の働きを止めたり、香味を悪くする原因となる菌を殺菌する目的で加熱処理をしていますが、「生酒」がそれをしていないので、搾りたてならではの華やかな香りやフレッシュ感を味わうことができます。
その瑞々しさ…まさに夏にぴったり!保存期間はやや短くなってしまいますが、家族や友人と分け合えばあっというまに飲みきってしまいそう。冷奴やお刺身などの淡白なおつまみとの相性もバッチリです。
にごり酒
もろみを搾る時に、目の粗い布やザルを使ってお米や麹などをあえて残したままにする日本酒を「にごり酒」といいます。
にごり酒は瓶内で発酵していることもあるので、シュワシュワした発泡感やガス感があり、夏にもってこい!お米の粒や酵素が残っている状態なので、栄養も詰まってそうですね。シルキーな舌触りとほどよい酸味で、これまたスルスルいけてしまいます。
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「夏酒」をより楽しむ!おすすめの飲み方
私の家の近くにあるスーパーの【夏酒コーナー】で発見したお酒で、おすすめの飲み方をご紹介したいと思います。
◎大納川天花 純米吟醸 夏酒〈生詰め原酒〉【秋田・大納川】
日本酒としては珍しく、白麹を使用した酸味が効いている夏酒です。純米吟醸らしく華やかな香りがあり、生詰め原酒ながら軽快な味わい。涼しさを感じさせる金魚ラベルでジャケ買いしました!
キンキンに冷やして
グラスに注ぐと、お花のような少し甘やかなフローラル系の吟醸香が漂ってきました。口に含むと、白麹由来と思われるキュッと引き締まった酸味があり、食欲をそそります。
ふっくらとしたお米の旨味も口の中に広がり、まろやかな印象がありつつ、やっぱりクエン酸がキュッと効いてきます。すーっと心地よい余韻が続いていきます。
オンザロックで
次はオンザロックです。冷蔵庫の製氷機でつくったものではなく、コンビニやスーパーで購入できる純粋な氷を使うことをおすすめします!
そのほうが雑味もなく、氷が溶けるスピードもゆっくりなので、よりよい状態でお酒を楽しめますよ。オンザロックにすると、その瞬間から氷が溶けてお酒となじんでいき、飲みやすくなりました。
カランカラン〜という氷の音も涼やかでいいんですよね。こちらのお酒は原酒なので、極端に味が薄くなることもなく、酸がキリッとシャープになった気がします。余韻も冷酒の時よりも短くなって、スイスイ飲めるようになりました。
ソーダ割りで
つづいては、ソーダ割りを試してみました。お酒:ソーダは【7:3】の割合。
原酒といっても、こちらのお酒のアルコール度数は15度くらいです。せっかくの酸味が炭酸のシュワシュワで消えないように…。お酒の味わいとして後半に強かったお米のふっくら感が、炭酸が加わったことにより軽快になりました!
飲み進めるうちに飲みごたえがなくなってきたら、“追い酒”して味を調整してみましょう。
体が冷えたらぬる燗も
「ぬる燗」とは、40℃くらいの比較的ぬるめのお燗のことです。暑いからといって、冷たいものばかり飲んでいると、体が冷えてお腹を壊してしまうこともありますよね。
そんな時には、ぬる燗がおすすめです。 こちらのお酒では、酸味もほどよく立ちつつ、湯気とともにのぼってくるふくよかな米の香り、丸みのある米の旨味が感じられ、甘い余韻がゆるゆると続きました。
▼熱燗とぬる燗とは?こちらの記事で解説! 熱燗とぬる燗の作り方を紹介!日本酒を温めた燗酒を楽しもう!
まとめ
「夏酒」は、ラベルがおしゃれでジャケ買いしたくなったり、低アルコールで飲みやすかったり…飲み方のアレンジもできるので、実は日本酒ビギナーさんがあれこれ飲んで試すのにとてもよい機会なのではないでしょうか?今まで「とりあえずビールかな〜」だった皆さんも、ぜひ「夏酒」チャレンジしてみてください!
Profile
いさわゆか
出身は宮城県仙台市、現在は東京都で暮らしています。飲食業への転職をキッカケに日本酒の勉強を始めました。日本酒の味わいはとても幅があって、どんどん世界が広がりますね。一緒にお気に入りのお酒を見つけていきましょう!