日本酒の正しい「保存方法」知っていますか?おいしさを保つ4つの鉄則とは?
日本酒を買ってみたものの、すぐに飲まないことってありますよね。いただきものの日本酒を開栓するまでに、時間が経ってしまうことも。
実は日本酒は、非常に品質が変化しやすいお酒。もらったまま、買ったまま置いておくと味がどんどん変化していくのです。
そこで今回は、日本酒をおいしく飲むための正しい保管・保存の方法をお伝えします。開栓したあとの保管方法や楽しみ方も紹介しますよ!
日本酒に賞味期限はある?
日本酒のラベルを見ると、製造年月はあってもそれ以外の年月日の記載はありません。実は日本酒には賞味期限がないんです。
なぜなら、比較的高い度数のアルコールが含まれる日本酒は、開封しなければ腐敗しないため。ジュースやほかの飲み物のように、長く置いたものを摂取して身体に害を及ぼすことがないという意味です。
ただし!あくまでも「害を及ぼさない」ということであり、製造から月日を経れば経るほど確実に味は変化していきます。賞味期限はなくても、日本酒をおいしく飲むために、必ず適切に保存・保管しましょう。
日本酒の正しい保存方法・保管方法とは?
日本酒は非常に品質が変化しやすいため、おいしい状態で味わうには正しい方法で保存・保管しておくのが大切です。
冷蔵庫で保管する方も多いかもしれませんが、常温保存で問題ないものもあります。茶の間の隅にでーん!と一升瓶が置いてあって、毎晩おじいちゃんやお父さんが飲んでいた…という方もいるはず。
実は火入れを2度しっかりおこなって出荷されたお酒は、日本酒のなかでは比較的温度変化に強いのです。「本醸造」や「普通酒」と呼ばれる日本酒は常温でもあまり問題なく保存できます。 一方で、生酒やスパークリング日本酒、精米歩合の低いお酒などは熱や温度の変化を受けやすいため、冷蔵庫で保存するなど注意が必要です。
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日本酒をおいしく保存する4つの鉄則
では、具体的にどんな点に注意すればおいしい状態を保てるのでしょうか。お酒を提供する側も気をつけているポイントを4つ紹介します。
紫外線を避ける
日本酒にとっての大敵、紫外線。透明だった液体が数時間で黄色や茶色に変化し、劣化臭が生じます。また、実は蛍光灯からも紫外線の影響を受けることがあるので、光を避け暗い場所で保管するのがベストです。箱入りの日本酒は箱のままで、箱がないものは新聞紙や布を巻いて保管するのも効果的です。
熱から守る
日本酒を常温(20~25℃)以上で保管すると、熱の影響で黄色や茶色に変化し「老香(ひねか)」と呼ばれる劣化臭が生じます。
理想は5~10℃、最高でも15℃以下で保存するのがおいしく保管するポイント。また、一定の温度での保管は変質を防ぐことに繋がります。
特に、生酒は5~10℃でも劣化が進むので購入後すぐに飲むか、冷蔵庫で保管することをおすすめします。
刺激を与えない
炭酸ガスを含むスパークリング日本酒などは、衝撃を与えるとガスが吹き出したり、瓶が割れたりする恐れがあります。活性タイプのにごり酒も、常に瓶のなかでガスが発生しているため、同様に注意が必要です。
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酸化防止策
特に開栓後の注意点として、酸化を避けるのがポイント。というのも、空気と接することで、日本酒に含まれる成分が変化する「酸化」という現象が起こるためです。
酸化=酸っぱくなる、というわけではありません。空気と触れることにより香りが飛んでしまったり、味わいの特長が感じにくくなったりする現象です。
一方で、酸化はプラスの変化をもたらしてくれることも。ワインの「デキャンタージュ」をご存じでしょうか?瓶からグラスやカラフェに移して空気に触れさせることで、渋味や飲み口の粗さを和らげてくれる現象です。
同じように、日本酒も例えば新酒などフレッシュで荒々しさが感じられる場合、開栓して少し日を置くことでまろやかさ、やわらかさが増します。
開栓後の日本酒の保存方法は?
開栓後はできるだけ冷蔵庫での保管がおすすめです。
注意したいのが、開栓したらかならず変化が進むという点。
瓶を一度開けると空気が入り、その部分から徐々に酸化していきます。特に日本酒の量が減れば減るほど、瓶のなかに入る空気の量が増えるため、酸化が進むスピードが速くなるのです。
冷蔵保管
冷蔵庫であれば、先に述べた熱での変化がなく、低温かつ一定の温度で保管できるので長くおいしい状態を楽しむことができます。5~10℃という日本酒にとっての適温でもあるのが冷蔵庫です。日本酒セラーと呼ばれる日本酒専用の冷蔵庫も販売されています。
縦置き保管
開栓後の日本酒は、横ではなく縦に保存しましょう。キャップの金属とお酒が触れて錆びるのを防ぐだけでなく、瓶のなかでお酒と空気が触れる面積が減り、変質防止につながります。
空気を抜いて保管
専用の器具が必要ですが、瓶のなかの空気を抜いて保管するのも酸化を防ぐのに有効。飲食店によっては、提供後に毎回瓶内の空気を抜いて冷蔵保管することもあります。とはいえ、初心者にはハードルが高いので、こんな方法もあるんだという程度で認識しておいていただけるといいかもしれません。
開栓後はいつまでに飲めばいいの?という疑問をよく聞きます。
いつまでという厳密な賞味期限はないですし、一般的な食品のように「できる限り早く」ということもありません。なぜなら変化を楽しむのも日本酒の醍醐味だからです。
「おいしい」と思える状態を探りながらじっくり味わうのも、瓶で日本酒を購入する楽しみのひとつですね。
日本酒の常温保存と熟成
日本酒の常温保存はできる?
お伝えしたように、非常に変化しやすい日本酒。特に常温だと変化が早く進みます。ただ、冷蔵庫や倉庫に空きがなく常温で保管することもあるかもしれません。
その場合は布や新聞紙でくるみ、温度変化の少ない棚に入れるといった対策をすると、多少変化のスピードを和らげることができます。
常温保存は可能ですが、冷蔵保存よりも変化が速く進むため、味わいの変化も大きいことは覚えておいてくださいね。
日本酒の”熟成”を楽しんでみよう
変化はマイナスではなくプラスの味わいを生み出すこともあり、それを「熟成」と呼びます。長期間の保管後、色や香りの変化を熟成と呼ぶか、マイナスの方向に変質してしまうかの判断はなかなか難しいかもしれません。初心者が熟成させるならば、常温よりも変化の少ない冷蔵庫で始めるのがおすすめです。
さらに熟成にはさまざまな方法があり、家庭用の冷蔵庫で保管して数か月の変化を楽しむこともあれば、-5℃という凍らないぎりぎりの温度で数年保管する「氷温熟成」をおこなう場合もあります。
長期間寝かせて熟成させた「熟成酒」(古酒)の専門店もあるほど、熟成の期間や方法は多種多様。数年~なかには数十年寝かせた日本酒もあり、まるでウイスキーのような色味、はちみつやみりんのような味わいに仕上がるのです。
日本酒愛好家は、あえて買ってからすぐに飲まずに保管しておき、味の変化を楽しむ場合も。長時間冷蔵庫に眠っていたお酒が思いの外おいしく熟成していた…なんて思わぬ発見があって嬉しいです。
日本酒を正しく保管し、おいしく変化を楽しもう
日本酒の保管方法・保存方法やおいしく楽しめる方法を紹介しました。
実は秋口によく見かける「ひやおろし」「秋上がり」も、実は冬に搾ったお酒を夏のあいだ蔵で貯蔵しておき、味を熟成させてから出荷したもの。
搾りたての新酒もおいしいですが、ひやおろしも味が乗っていておいしいですよね。バナナと同じで、とれたての少し青いくらいが好みか、多少斑点が出てきて柔らかくなってからが好みかは、人による、品種によるのといっしょです。
まずは基本的な保存・保管方法を知り、慣れてきたら日本酒の「変化」「熟成」を楽しんでみてはいかがでしょうか?
Profile
石川 奈津紀
仙台市出身でNHK山形、NHK仙台でキャスターを務めたのち2018年から東京でフリーアナウンサーとして活動。 現在はBSテレビ東京の朝の番組「日経モーニングプラスFT」に出演中。 日本酒を健康的に楽しみ、飲みながら痩せる「NOMIYASE」をSNSを中心に発信している。唎酒師。ダイエットプロフェッショナルアドバイザー。