日本酒で有名な県といえば?生産量や消費量から読み解くお酒造りの文化
日本では、47都道府県全ての地域で日本酒が造られているのをご存知でしたか?そして1000ヶ所を超える酒蔵が点在し、その地域に根付いたお酒造りをしています。
今回は日本酒の生産量、原料である酒米、日本酒の消費量に着目し「日本酒で有名な県」を紹介します。
日本酒を飲んで楽しむのはもちろんですが、日本酒にまつわる豆知識を知ることで、より日本酒を楽しむ幅が広がる内容となっています。
日本酒造りで有名な酒処トップ3といえば?
まずは日本酒の生産量トップ3の都道府県から紹介します。スーパー、コンビニ、チェーンの飲食店で見かける多くの日本酒は、上位3つの都道府県のお酒が多くを占めています。
日本の2大酒処:兵庫県と京都府
兵庫県の灘(なだ)、京都府の伏見(ふしみ)は2大酒処として、古くは江戸時代からお酒造りが盛んな地域です。
現在でも都道府県別では兵庫県が全国1位、京都府が全国2位の日本酒(清酒)の生産量を誇っています。
この2つのエリアは多くの酒蔵が点在し、歩いて巡れる酒蔵ツアーも人気です。それぞれの酒蔵で試飲をしながら自分好みの日本酒も見つけられそうですね。
灘、京都以外では広島の西条も酒蔵巡りでは有名なエリアです。 >>関連記事:日本酒のテーマパーク西条酒蔵巡り!7酒蔵を徹底的に楽しめる散策ルートを紹介!
また、灘と伏見には大手メーカーの酒蔵が点在し、そこで造られた日本酒は全国へ流通し、スーパーやコンビニでよく見かけることができます。最近では日本酒を飲み慣れていない層へ向けた商品も多く開発され、特にお家飲みで重宝しそうな日本酒も発売されています。
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新潟県は第3位の生産量
兵庫県と京都府に続く日本酒の生産量第3位は「新潟県」です。新潟県は米処としても有名で、こちらは全国1位の生産量を誇っています。(2020年 農林水産省「令和2年産水陸稲の収穫量」を参照)
新潟の日本酒といえばスッキリした味わいで辛口な「淡麗辛口」の日本酒が人気です。
灘や伏見のお酒と違った「辛口なお酒」を全面にブランディングしたことで、1970年代から「淡麗辛口ブーム」がおこり、上越新幹線の開通も後押ししたことで、生産量が増加する結果となりました。
新潟県の日本酒もスーパーやコンビニで多く見かけることができます。全国ブランドとして知名度の高い日本酒から、地元でしか飲めない地酒まで幅広くあり、日本酒ファンを魅了し続けています。
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地酒とは?
ところで、「地酒」を辞書で引いてみると、
その地方でつくられる清酒。特に、灘(なだ)や伏見(ふしみ)を除いた地方のものをさす。
一般的に認識されている「地酒」とは、大手メーカーや、有名な酒処(灘や伏見)を除いた場所で造られているお酒を指すことが多いです。
ただし、実は「地酒」のはっきりとした定義は決まってはいないのが現状で、例えば近年で有名になり全国区になった酒蔵などは「地酒?日本酒?」と迷うことも多々あります。
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なお、兵庫、京都、新潟で全体の50%以上の生産量を誇っており、それ以降の日本酒の生産量が多い都道府県は、埼玉県、秋田県、愛知県、福島県、山形県、山梨県、山口県となっています。
日本酒造りに欠かせない酒米トップ3
つづいて紹介するのは日本酒造りに欠かせない酒米(酒造好適米)に着目し、酒米の検査量(生産量)トップ3を紹介します。
農林水産省では、米の農産物検査結果を公表しており、この検査数量を大まかな生産量として、この記事では紹介します。
第1位:山田錦(やまだにしき)
山田錦は兵庫県で最も多く栽培され、兵庫県だけで全体の約6割を占めています。「山田錦=高級(有名)な酒米」として認識されている方も多く、山田錦が商品名に記載されているラベルを多く見かけます。
兵庫県の他には岡山県や山口県も栽培量が多く西日本を中心に栽培されています。山田錦で造られた日本酒の特徴奥行きのある豊醇な味わいになると言われています。
第2位:五百万石(ごひゃくまんごく)
五百万石は北陸地方を中心に栽培され、新潟県で最も多く生産されています。五百万石は寒い地域でも栽培することが可能で、日本海側のほとんどの県で栽培されています。
五百万石で造られた日本酒の特徴は、淡麗でスッキリとした味わいになると言われています。
第3位:美山錦(みやまにしき)
美山錦は長野県での栽培が最も多く、全体の約5割が栽培されています。寒冷性がある品種なので、東北地方でも栽培されています。
寒冷地における酒米代表で、山田錦、五百万石に次ぐ第3位の酒米ですが、最近では、秋田酒こまちなど各県オリジナル品種の台頭で減少傾向にあります。
美山錦で造られた日本酒の特徴は、なめらかでさっぱりとキレの良い味わいになると言われています。
>>関連記事:5つの代表的な酒米を学ぼう!
お酒造りに向いている酒米の条件とは?
普段、私たちが食べている食用米(飯米)は、食べて美味しいお米ですが、酒造好適米はその名の通り、酒造りに向いているお米になります。
お酒造りに向いている酒米の要件は4つあり、「精米中に砕けにくい」、「米粒が大きい」、「心白がある」、「タンパク質が少ない」です。
>>関連記事:4つのポイント「酒米と食用米の違い」
酒米の精米歩合とは?
精米によって削られたあとに「残ったお米の割合」を表す数字です。例えば精米歩合40%とは、40%のお米が残っているという意味です。私達が普段食べている食用米も玄米を削って白米に精米しています。
一般的に精米歩合が低い(酒米を沢山削る)方が、雑味が少なくスッキリした味わいで、香りが高い日本酒が多いです。たくさんお米を削ることで、タンパク質や脂質などを取り除き、よりクリアな味わいになるためです。
>>関連記事:日本酒の精米歩合とは?数字の意味や精米する理由、特定名称について解説
また精米歩合によって変わってくるのが「特定名称」と呼ばれる日本酒の規格で、特定名称酒は、原料や製法によって8種類に分類されます。
特定名称 | 精米歩合 | 醸造アルコール | 吟醸づくり |
---|---|---|---|
純米酒 | 規定なし | ||
本醸造酒 | 70%以下 | ✔ | |
特別本醸造酒 | 60%以下 | ✔ | |
特別純米酒 | 60%以下 | ||
吟醸酒 | 60%以下 | ✔ | ✔ |
純米吟醸酒 | 60%以下 | ✔ | |
大吟醸酒 | 50%以下 | ✔ | ✔ |
純米大吟醸酒 | 50%以下 | ✔ |
参考:国税庁「清酒の製法品質表示基準」の概要
日本酒の消費量が多い都道府県は?
日本酒や酒米の生産量を解説したあとは、日本酒を消費している都道府県に注目してみることにしましょう。
日本酒の生産量が多いエリアの近くでは、酒米の栽培量も多かったですが、実際に消費しているエリアは人口の多い大都市圏がランクインしています。
国税庁の「酒類販売(消費)数量表」によると、1位は東京都(108,342kl)、2位は大阪府(68,763kl)、3位は神奈川県(51,525kl)となっています。
やはり、成人人口が多いエリアで多くの日本酒が消費されているようです。日本酒の生産量トップ3の消費量はというと、兵庫県(43,566kl)、京都府(23,780kl)、新潟県(50,115kl)となり、人口比で比べた場合、新潟県に日本酒消費量がずば抜けて高い結果となってります。
まとめ「日本酒で有名な県」
日本酒の生産量、原料である酒米、日本酒の消費量に着目した「日本酒で有名な県」の解説はいかがでしたでしょうか?最後にまとめとして、各項目ごとに日本酒で有名な県を紹介します。
【日本酒の生産量トップ3】
1位:兵庫県、2位:京都府、3位:新潟県
【酒米の生産量トップ3】
1位:山田錦(兵庫県)、2位:五百万石(新潟県)、3位:美山錦(長野県)
【日本酒の消費量トップ3】
1位:東京都、2位:大阪府、3位:神奈川県
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SYULIP編集部
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