純米酒と純米吟醸酒の違いとは?違いを知るための飲み比べの方法もご紹介
日本酒には多くの種類があり、それぞれにどんな違いがあるのかわかりにくいところがあります。
そんな多くの日本酒の種類の中から、今回は「純米酒と純米吟醸酒の違い」について解説。
その違いを実際に肌で感じるための方法についても紹介します。
純米酒とは
純米酒とは、醸造アルコールを添加せず、米、米麹、水のみを原料として造られる日本酒のことです。
醸造アルコールは日本酒の味わいをすっきりと軽快にするために加えますので、それを加えない純米酒はお米の旨味やふくよかさがよく感じられる傾向があります。
純米酒について、より詳しく知りたい方はこちらの記事が参考になります。
▶ 純米酒とは?本醸造や吟醸酒との違いは?種類や定義の解説とおすすめの楽しみ方も紹介!
純米吟醸酒とは
純米吟醸酒とは、純米酒の中でも原料米の精米歩合が60%以下で、吟醸造りという手法で造られている日本酒です。
「原料米の精米歩合が60%以下」というのは、精米によって米の周りを少なくとも40%は削らないといけないという意味です。
「吟醸造り」というのは、明確な定義はありませんが、一般的には「吟醸酵母を使って、低温でゆっくり時間をかけて発酵させる」ことなどを指します。
純米酒と純米吟醸酒の違い
純米酒と純米吟醸は、「製法」「味」「価格」の3つで違いがあります。
製法については「純米吟醸とは」の項で説明したとおり、純米酒は精米歩合の取り決めがないのに対し、純米吟醸酒は「精米歩合が60%以下」という明確な基準があります。
米の周りには脂質やタンパク質などが豊富で、これらはお酒の「雑味」の原因になります。そのため、純米吟醸は純米酒と比べると雑味のないすっきりとした味わいに仕上がりやすいです。
また、これらの成分は吟醸香(華やかさやフルーティーさを感じさせる香り)の生成を抑制します。
加えて、純米吟醸は吟醸酵母の使用や低温発酵などにより、さらに吟醸香が発現しやすくなるため、純米酒と比べると華やかさやフルーティーさが際立つ日本酒になりやすいです。
反対に、純米酒は米ならではの香りや味わいが感じられる日本酒に仕上がりやすいといえます。
そして、米をたくさん削ることも、製造に時間がかかることも、酒の原価を上げますので、純米酒より純米吟醸の方が売値は高くなる傾向にあります。
「味の違い」を肌で感じるための方法
純米酒と純米吟醸の違いについてご紹介しましたが、みなさん1番気になっているのはやはり「味の違い」ではないかと思います。
製造方法など、知識的な部分は説明を読めば理解できますが、「味の違い」についてはいくら文章で説明したところで、実際に飲み比べないと本当の意味で理解することはできません。
しかも、「純米酒」と「純米吟醸」の違いを知るためには、やはり同じ蔵の酒同士を飲んで比較しないと、製法(吟醸)による違いがどこに表れているか感じ取ることはできないでしょう。
そこでおすすめなのが、1つの蔵の酒を複数本、少量(180~300mL)ずつパッケージした飲み比べセット。
ほとんどの日本酒は四合瓶(720mL)で提供されていますが、飲み比べのためにそれらを1本ずつ計2本(計1.4L超)も買うのは、よほどの酒豪でなければ少し量が多すぎるでしょう。
その点、1瓶180~300mLというのは飲み比べて飲み切るのにちょうどいいサイズです。
ちなみに、日本酒の品揃えのいい居酒屋でも、同じ蔵の純米酒と純米吟醸を提供しているお店はほとんど見かけません(それよりも違う蔵の酒を用意した方がバラエティが豊かに見えるからだと思われます)。
また、純米酒、純米吟醸、純米大吟醸の3本セットを買えば、「純米酒:純米吟醸」だけでなく、それらと純米大吟醸を比較することもでき、より立体的に製法による味の違いを捉えることができます。
※純米大吟醸は原料米の精米歩合が50%以下で、純米吟醸よりさらにお米を削った日本酒です
それでは、ここからは純米酒と純米吟醸、ひいては純米大吟醸の味の違いを知るのに、おすすめの飲み比べセットをご紹介します。
フルーティーで上質、そして王道の日本酒
まず紹介するのは「「正雪」歴史と文化の薫る、東海道の美酒を堪能する飲み比べセット」
清らかな水、こだわりの原料、確かな技量が醸し出す王道の日本酒を、純米酒、純米吟醸、純米大吟醸の3本でセットにしました。
「純米」はふくよかで旨味とコクが感じられる辛口の日本酒です。
上質で飲みやすさがありながらも、多くの人が認識している「純米酒らしさ」もしっかり感じられ、今回の飲み比べの教材酒としてはこれ以上ないほど適任。
「純米吟醸」は、穏やかな吟醸香と、シャープで爽快な味わい、そしてその奥ではコクと旨味が染み渡るように感じられます。
特に、純米酒と比較したとき、今回解説した「吟醸香」の違いが明確にわかるので、やはり今回の主旨にぴったりなお酒。
さらに、「純米大吟醸」は精米歩合35%と低く、お米をかなり削っています。
3本を飲み比べれば、削りの度合いによって日本酒の香味がどう変わっていくのかを、身をもって体感することができます。
▶︎ 歴史と文化の薫る、東海道の美酒を堪能する飲み比べセット
「違いは吟醸香だけではない」ことがわかるセット
次におすすめするのが、「千古乃岩 ミニサイズ飲み比べセット」です。
内容は純米大吟醸酒、純米吟醸酒、純米酒の3本セット。
ミシュラン3つ星店にも採用されたという品質の高さも魅力ですが、今回もっと注目していただきたいポイントは他にあります。
それは、こちらの蔵のお酒は、純米吟醸も純米大吟醸も、華やかさやフルーティーさがかなり抑えられているという点です。
純米酒と純米吟醸の違いが語られるとき、やはり最も焦点が当たるのは吟醸香の有無。
しかし、こちらのセットを口にすれば、純米酒と純米吟醸の違いはそれだけではないということが、わかりやすく、身に染みて感じられます。
酒造りには超軟水が使われており、純米酒はクリアな印象の中にまろやかな味わいと後味の力強さが感じられるお酒です。
ミシュラン3つ星店にも採用された純米吟醸は、澄み渡った飲み口の中にも”繊細な旨み”を感じられる、非常に完成度の高いお酒。
そして、純米大吟醸は大吟醸らしからぬ落ち着いた香りと、後味にはシャープな切れ味を感じます。
バランスの良い純米吟醸と比べると、より引き締まって研ぎ澄まされたような仕上がり。
大多数の吟醸酒では、華やかな吟醸香が印象的なせいで、その奥にある吟醸造りの繊細で洗練された味わいは見落とされがちです。
こちらのセットを飲み比べれば、その見えにくく細やかな違いもわかりやすく感じることができるはずです。
▶︎ 千古乃岩 ミニサイズ飲み比べセット(180mL)
▶︎ 千古乃岩 飲み比べセット(300mL)
フルーティーな味わいを、より贅沢に
3つめに紹介するのが「華やかな山形の美酒「吾有事(わがうじ)」飲み比べセット 300mL」です。
正確にいうと、こちらのセットで比較できるのは「純米酒」と「純米吟醸」ではなく、「特別純米」と「純米大吟醸」になります。
※特別純米は定義が複雑なのですが、簡単にいうと純米酒の中でもその酒蔵に特有の製法で造られている日本酒などを指します
このセットに含まれる日本酒はどれも南国のフルーツのような煌びやかな香りがするのですが、味わいの面では、特別純米と純米大吟醸の違いが明確にでています。
また違う側面から、純米酒と純米(大)吟醸の違いを感じて頂きたいと思い、今回紹介するセットに加えました。
「純米大吟醸 雲の上」。
色合いの違う華やかさが何層も重なったような煌びやかな吟醸香。
フルーティーな甘さと、それを引き立てる心地よい酸味、広がりながら優しくフェードアウトしていく余韻はまるで雲の上にいるような心地よさ。
「純米大吟醸 火先(ほさき)」。
トロピカルな吟醸香が芳醇に香りながらも、澄んだ旨味とドライな味わいをもつ辛口の日本酒。
料理と同調しつつ、余韻には華やかな吟醸香を添えてくれ、食卓に豪華絢爛な彩を与えてくれます。
「特別純米酒」。
3本の中でも最もトロピカルという表現がふさわしい、フルーティーな香り。
心地よい旨味とコクも感じられ、それを架け橋に、食中酒として実にさまざまな料理とマッチします。
▶︎ 華やかな山形の美酒「吾有事(わがうじ)」飲み比べセット
(制作メンバー)
ライター:ベーさん(Twitter)
ディレクター:卯月りん(Instagram / Twitter)
酒小町( Instagram / Twitter)
Profile
酒小町
「日本酒を、もっと身近に」をコンセプトにした日本酒メディア&コミュニティ「酒小町」の編集部です。 メンバーは20代から30代。 お酒好きをキッカケとして入ったメンバーが、職場や家庭では出会えないメンバーと出会ったり、自分の得意なことに気づけたり、自分のやってみたい!を叶える企画を立ち上げたり、凹凸を補いあいながら楽しめる場所です。