『谷根千』日本酒ほろ酔い散歩〜日本酒初心者さん向け! 酒屋で日本酒を買ってみよう
今回は東京の下町エリア”谷根千”を巡る日本酒ほろ酔い散歩。”谷根千”とは「谷中」「根津」「千駄木」エリアの総称で、おいしいお店や雑貨屋さんなどが並び、散策するにはぴったりな趣を感じるエリアです。
<それではさっそく、お散歩しながら、日本酒にまつわる場所を巡っていきます!まずは、千駄木にあるお酒屋さんからご紹介。
夏と言えば、キンキンに冷えたビールやしゅわっとおいしいハイボール。 ごくごく飲めるサワー…もいいですが!ぜひお家でも日本酒を飲んでみませんか?
「でも、どれを選んでいいかわからない…」「1本飲み切るのはなかなかハードルが高い」といった印象があるかもしれませんが、大丈夫です!
創業300年の歴史ある伊勢五本店で「日本酒の選び方」や「お家での楽しみ方」を聞いてきました。
千駄木 伊勢五本店
お店の前でパシャリ!テンション上がってます!
とても趣のある入口で、お散歩で訪れるのにぴったり。どんなお酒があるかワクワクしちゃいますね!
なんと、お店には700種類ものお酒が!200種ほどの日本酒に加え、焼酎やワイン、クラフトビールやスピリッツなど幅広い品ぞろえで、その道のプロが丁寧にお酒選びの相談に乗ってくれます。
全国の銘酒を取り揃えている伊勢五本店
・住所:東京都文京区千駄木3丁目3-13
・電話/FAX:03-3821-4573
・(平日)AM 11:00〜PM 7:30
・(休日)AM 11:00〜PM 8:00
・定休日:火曜日・祝日
お盆、年末年始(店舗までお問い合わせください)
・HP:こちらから
そして、今回相談に乗ってくださったのはこの方!店長の長谷部さんです。
長谷部店長!日本酒について教えてください!
長谷部 匠平(はせべ・しょうへい)さん
好みの日本酒を選んでもらうには?
今では酒販店に行って冷蔵庫から選ぶのに抵抗がなくなりましたが、最初のころはお店に足を踏み入れるのもドキドキ…。
ラベルの裏を見たいけれど(冷蔵庫を開けて見せてもらえるかなぁ…)と、店員さんに声をかける勇気もなかなか出なかった記憶があります。
初心者だと、お店に行っても「そもそもどう相談していいかわからない」ということがありますよね。自分で選ぶのも楽しいけれど、せっかくなら好みの日本酒を手にとってもらいたい。 ならばぜひ、その道のプロである店員さんに相談してみましょう!
長谷部さんによると、店員さんにお酒を選んでもらうポイントは大きく3つ。
- 飲んで「おいしい」と感じた銘柄から選んでもらう
- お料理に合わせて選んでもらう
- 番外編:贈り物として選んでもらう
このポイントで選んでもらえば、好みのお酒に出会う確率がぐっと上がるそうなんです。それぞれ詳しく聞いてみました!
日本酒の選び方①飲んで「おいしい」と感じた銘柄から選んでもらおう!
一番シンプルなのがこの方法。飲んでおいしかった銘柄を覚えておくこと。
長谷部さん:「どういう銘柄がおいしかったか」、「どういう感じでおいしかったか」などを聞くことが多いです。銘柄を覚えている方がおすすめしやすいですが、なんとなくでも「フルーティーで」とか言ってもらえると選びやすいですね!
石川:逆に辛口で!とか言われると難しいですか・・・?
長谷部さん:「辛口で!」も結構ありますよ。ただ話を聞くと「それって辛口じゃないんじゃないかな?」みたいなことも。なので、どのような感覚で辛口なのかを探りますね。 香りの感じ方も、グラスに注いだ瞬間からなのか、口に近づけたときに香ったのか。「どこから(どのくらいの位置から)香ってきました?」と聞くこともあります。
石川:え~、そこまで!だいぶ深掘りするんですね~!長谷部さんは、特に香りの部分から攻めるんですね。
長谷部さん:そうですね!一番わかりやすい特徴だと思います。日本酒の香りって、果物にたとえられるくらい華やかな香りですよね。「フルーティー」と感じたのであれば香り系の酵母を使っていることが多いです。そこからスッキリなのか?濃淳なのか?好みを聞いて味の濃淡をしぼって選んでいます。
いやぁ、長谷部さんの掘り下げ力、すごい…!辛口と感じても、香りはフルーティーで後味すっきり、なんて場合もあるので、ヒアリング力が試されているんですね。
日本酒の選び方②お料理に合わせて選んでもらおう!
石川:その日食べたい料理や、合わせたいお料理で選んでもらうのもありですか?
長谷部さん:そのパターンも結構ありますね!「白身魚のいいのがあるので、合うお酒を選んで~」というお客さまもいらっしゃいます。 銘柄を気にしない場合は、その方が選びやすいことも。困ったときはこちらから「じゃあ何食べます?」って聞いてしまうこともあります。
石川:たしかに、お酒と一緒に料理も楽しみたいですもんね!
長谷部さん:お酒単体でちびちび日本酒だけを味わう場合は華やかなお酒を薦めたりもしますが、たとえばお鍋に合わせるのであれば、出汁に合わせて素直な純米酒を選んでいます。
【番外編】贈り物として選んでもらおう!
石川:ちなみに…自分で楽しむのではなく、日本酒を贈る際のポイントなどはありますか?「贈り先の方が何を飲まれるか?」など伝えればいいのでしょうか
長谷部さん:そうですね。あとは予算と地域も聞きますね!同じ地域のお酒だと近所で買えることもあるので。
石川:なるほど!いつも飲んでいる銘柄を贈るのも芸がないですもんね…。
長谷部さん:東北だったらあえて九州とか西のお酒を薦めることも多いです。
石川:たしかに!わたしは東北生まれなのですが、東京に来てからはじめて出会うお酒がたくさんありました。出会ったことのないお酒をプレゼントするのも素敵。 あと、地域によってお酒の味わいもかなり特徴がありますよね。
長谷部さん:はい!味覚文化圏という考えがあるんです。地域に根付いた食文化に合わせて、お酒も歴史的に造られているんです。宮城の沿岸だったら太平洋の生のお魚に合うフレッシュなお酒が多い。逆に能登・日本海側は発酵食品が多く料理の味も濃いので、石川のお酒(菊姫など)は山廃造りの濃いお酒が多い、ということも。地酒とはよくいったものです。
石川:いや~!そういった意味でも地域を聞くのは重要なんですね。各地のお酒がそろう東京だからこそ、そのあたりは心がけたいですね。
贈り物でも「地域」と「料理」が大事なのですね。ふむふむ。いろいろ聞きましたが、一番大事なことは…
長谷部さん:一番は「このお酒好きだな」というのを見つけておくのが重要。きっと日本酒を買いにくる人は「おいしいな」と感じたお酒があるはず! その1本を覚えておいてもらえると、そこを軸に広げていけるのでおすすめしやすいです。
日本酒初心者向け!プロおすすめの日本酒
せっかくなので、長谷部さんおすすめの1本を選んでもらうことに。とはいっても、初めはなかなか1本をすぐに飲み切るのは難しいので、
- 日本酒初心者が飲みやすいお酒
- 1人で4合瓶を買っても、1週間ほどかけてゆっくり楽しめるお酒
という条件で選んでいただいたのが、こちら。
・タイプ:純米酒
・アルコール度数:13度
・使用米:夢の香
・醸造元:大木大吉本店(福島県)
自然郷の夏酒「芳醇純米」。 低アルコールながらジューシーな甘味があり、ほどよい酸味が全体を整えます。無濾過原酒なのでシュワっとしたガス感も感じられます。
※伊勢五本店ホームページより引用
長谷部さん:味の変化を楽しむならコレ。自然郷(しぜんごう)は、中盤やさしく柔らかい甘さがあり、余韻を少し酸で切ってくれます。何日かかけて飲むと、酸味がだんだん抜けていって、甘さにふくよかさが出てくるので、1人でもじっくり楽しむことができますよ!
日本酒との出会いは「一期一会」
冷蔵庫にズラリと並ぶ日本酒。どれを買おうかな…?
石川:それにしても、本当にたくさんの種類のお酒がありますね。伊勢五本店さんだけで200種もあるとなると、どれにするか悩みます…。
長谷部さん:そうですよね。お酒と出会えたきっかけを大切にしてほしいので、お店に来て気になったものはぜひ手に取っていただきたいです。
長谷部さん一押し「光栄菊」と
一期一会ということばがとても印象に残りました。たしかに、日本酒は生き物。同じようにつくっても毎年全く同じ味になるわけではないですし、味わいも変化するのでそのときに出会えた味わいを大切にしていきたいですね。
日本酒初心者さんもぜひ、酒屋に足を運んで、気軽に相談してみてくださいね!はじめは選んでもらって「このお酒、おいしい!」と感じたものを写真に撮って記録しておくと、だんだん自分のタイプがわかってきます。ぜひ、お家で日本酒ライフを楽しみましょう。
次回は、「谷根千日本酒ほろ酔い散歩〜後編〜」です。谷根千エリアで日本酒が楽しめるお店を紹介します!お楽しみに!
▼ 「谷根千日本酒ほろ酔い散歩〜後編〜」
『谷根千』日本酒ほろ酔い散歩〜野菜と日本酒でまったりタイム~
Profile
石川 奈津紀
仙台市出身でNHK山形、NHK仙台でキャスターを務めたのち2018年から東京でフリーアナウンサーとして活動。 現在はBSテレビ東京の朝の番組「日経モーニングプラスFT」に出演中。 日本酒を健康的に楽しみ、飲みながら痩せる「NOMIYASE」をSNSを中心に発信している。唎酒師。ダイエットプロフェッショナルアドバイザー。