日本最南端!沖縄で日本酒造りを続ける「泰石酒造」へ!黎明誕生のストーリーや酒蔵の様子をレポート!
日本酒好きなら一度は飲んでみたい沖縄産の日本酒「黎明」。
一般的に酒蔵の多くは、温度管理がしやすく菌の繁殖がしにくい、12月~3月の寒い冬の時期に日本酒を醸造しています。沖縄は冬でも平均気温15℃〜20℃。また酒米を栽培している農家も本州に集中しています。このような条件を見ると日本酒造りには厳しい環境の沖縄。どのように沖縄で日本酒造りをしているかとても気になります。
さて、今回そんな疑問を解消すべく訪れた場所は、沖縄県で50年以上に渡り日本酒を造り続けている泰石酒造。全国各地に点在する1500以上の酒蔵の中で最南端の場所に酒蔵を構えています。
日本酒造りには厳しい条件が揃う中、創意工夫を凝らした沖縄ならではの日本酒造りを見学してきました!
琉球政府時代に始まったお酒造り
1952年創業の泰石酒造。創業当時の沖縄はアメリカ統治下の琉球政府時代。泰石酒造がある「沖縄県うるま市」は沖縄県で一番サトウキビ栽培が盛んだったそうです。
そのサトウキビ栽培の副産物である「糖蜜」に目をつけ、連続式蒸留焼酎からお酒造りを開始した泰石酒造。その後、泡盛、ウィスキー、リキュールの製造販売免許を取得していきました。
沖縄唯一の日本酒が誕生!
先代創業者の安田氏が長崎県の黎明酒蔵の四季醸造に目をつけ、この環境なら十分沖縄で日本酒造りができると判断。1965年の調印式を得て、沖縄県で唯一の日本酒造りが始まりました。
技術提携の調印式の様子 パンフレットより抜粋
醸造工場を建設し日本酒の製造を開始したのは1968年。まだ沖縄返還前だったため、当時沖縄へ日本酒を販売するには輸出手続きを行う必要があり、なかなか本土の日本酒が流通しにくい状況。そのため泰石酒造の県内シェアは70%以上だったそうです。
4年後の1972年に本土復帰を果たすと、大関や月桂冠などの大手酒蔵が進出し日本酒がより一層身近な存在に。
四季醸造とは??
四季醸造とは文字通り「春夏秋冬」お酒造りを行うことを言い、四季醸造を可能にしたのは空調設備。外気温に影響されない低音の温度管理ができれば、冬の寒い時期と同じ様な日本酒造りが可能になります。
大手酒蔵を中心に採用されている四季醸造ですが、ここ沖縄の土地で日本酒を造るためにはこの技術が必要不可欠です。
沖縄の地で試行錯誤の日本酒造り
工場の設備を改修しながら時代に合わせた四季醸造を続ける泰石酒造。昔は工場内全てを冷却していたそうですが、現在は仕込みや貯蔵用のタンクを冷房貯蔵管理しています。
蔵元「安田泰治さん」
「昔は1年分を一気に製造していましたが、沖縄の土地柄もあり品質を保つのが難しいと判断し、年2回(2月と10月)の仕込みへ変更しました。今では足りない日本酒を夏場にも仕込むこともありおおよそ3〜4ヶ月の周期です。」
「出来る限り新鮮な状態で日本酒を提供するため、冷却された貯蔵タンクから約2週間単位で瓶詰めをしています。」
驚いたことに現在は安田さんを含め2名で日本酒の仕込み、工場管理、出荷、営業と一通りの仕事を対応しています。決して恵まれた環境とは言えない状況で、試行錯誤を繰り返しながら醸される日本酒「黎明」。味わいがとっても気になります。
泰石酒造の酒蔵を見学!
それでは蔵元安田さんと一緒に酒蔵見学スタート。その前に日本酒の仕込み工程をおさらいしましょう。
日本酒の仕込み工程
日本酒の仕込み工程
洗米から製麹作業
まずは1階でお米を洗う洗米作業。その後ポンプアップで洗米されたお米とお水が2階へ。その後浸水、蒸し、麹室で製麹(せいぎく)を行います。
少数精鋭で仕込まれる日本酒。仕込み工程の動線がとても考えられた酒蔵です。
泰石酒造の麹室
頻繁に技術交流ができない中、全国を巡回している国税事務所の鑑定官からのアドバイスをもらいながら、製麹工程を進化させていったそうです。
「今ある設備や道具を使い少しずつ工夫しながら、より美味しい日本酒を仕込む努力をしています。」
高温糖化もと四段仕込みと搾り
高温糖化もと四段仕込みという手法で日本酒を仕込む泰石酒造。「高温糖化もと」とは水、麹、蒸米を55℃程度まで温め糖化させ、その後冷却し続けながら酵母を加え生育する酒母です。その酒母の生育から数え4回に分け日本酒を仕込む手法を四段仕込みと呼んでいます。
その後室内を10℃程度まで冷やした酒母冷却室で酒母を育て、1階の仕込みタンクへ。
ここから1階の仕込みタンクへ
1階の仕込みタンクで約2週間アルコール発酵された後、1階から2階へポンプで戻し、袋詰めし、日本酒を搾っていきます。搾った日本酒はもう一度1階の冷却された貯蔵タンクへ。
「3,300L〜3,400Lの醪(もろみ)を1日で一気に早く袋詰めし、自重で一晩搾り、その後圧力版と油圧装置でゆっくり搾っていきます。超重労働なので仕込み毎に3〜4キロ体重が落ちますね。」
繰り返しますがこの一連の作業を2名でやっているそうです。長年の経験に加え、良く考えられた作業動線に驚きを超え感動を覚えました。
50年以上使っている槽(ふね)
搾った日本酒は冷却されたタンクへ
2階で搾った日本酒は1階の冷却されたタンクへ。タンクはクーリングロールと呼ばれる方式で冷却しています。
クーリングロールとは??
特殊なゴムが巻かれた細い管の中を冷水が通ることでタンクを冷えた状態にする冷却方式。もともとは建物全体を冷やしていましたが、熱交換の効率アップとコスト削減のためクーリングロールを採用。
保温材を巻く前のクーリングロール タンク内が冷え外側が結露している様子
その後、上澄みを濾過し、雑味、色素を調整しようやく製品となる日本酒へ。この時点では火入れをせず、新鮮な日本酒を届けたいという想いから、生酒を冷蔵貯蔵しています。在庫数を調整しながら出荷のタイミングに合わせ熱処理と瓶詰め作業を行います。
「火入れと瓶詰め作業エリア」
「火入れと瓶詰め作業エリア」
蔵人の想いが詰まった泰石酒造の日本酒
日本酒「黎明」と一緒に食べたい料理
酒蔵がある土地の名産や郷土料理と合わせて日本酒を飲んでみてはいかがでしょうか。泰石酒造の「黎明」も当初は甘口よりの味わいでしがた、沖縄料理に合わせていくうちに段々と辛口の日本酒になっていったそうです。
沖縄は油を使った料理も多く、1年を通じて気温があたたかいため「黎明」を冷やしてキリッと飲みたいですね!
てびち(豚足の煮込み)
「沖縄料理ではてびち(豚足の煮込み)やゴーヤーチャンプルーと一緒に召し上がってください。沖縄の気候に似ている台湾や香港の方々も自分たちの国の料理に合うと言ってましたよ。」
ゴーヤーチャンプルー
とっても気になる泰石酒造の「黎明」。次回は黎明のテイスティング、沖縄料理のおつまみを紹介したいと思います。お楽しみに!