秩父『武甲酒造』で美味しい日本酒に出会う旅〜電車で気ままに日帰りトリップ♪
都内から電車で揺られること2時間…自然豊かでゆったりとした時間が流れる秩父にやってまいりました。
今回は長い歴史を持つ「武甲酒造」にて酒蔵見学と利き酒を体験。伝統文化を受け継ぎながら醸すこだわりの日本酒!都心からもアクセス抜群の日帰り酒蔵訪問記です。
江戸中期から続く、こだわりの手造り「武甲酒造」
秩父という恵まれた環境
酒づくりにとって一番大事なものは、なんといっても仕込み水。武甲酒造で使用しているのは、秩父市と横瀬町の境にある武甲山の伏流水です。武甲山は標高1,304m、日本二百名山の1つとされています。石灰岩質の山なので、その伏流水はミネラルがとても豊富な中硬水。発酵が旺盛となり、できあがるお酒は辛口寄りの味わいになりやすいそうですよ。
また、山に囲まれている秩父盆地の夏は暑く、冬は山からの冷たい空気が入り込み天然の冷蔵庫のような状態に…。1年を通して晴れの日が多いことも、美味しい酒づくりに適した環境となっています。
街なかに突然現れる、重厚で立派な佇まい「武甲酒造」
創業は宝暦3年(江戸中期)で、2021年に創業268年を迎えました。店舗となっている建物は国の登録有形文化財に登録され築208年だそうです!歴史の深さを感じられて、タイムスリップしたような感覚に…
昔の人々の息づかいを感じる柱と千社札
建物の中心にあるこちらの柱、よーく見てみると…たくさんの千社札とその下には無数のキズが見えますよね。秩父には34ヶ所の観音霊場があり、江戸時代には観音信仰巡礼の地として賑わっていたそうです。その名残りがなぜか武甲酒造の柱にも…社長の長谷川さんは「札所35番だなぁ〜」なんて笑っていました(本当は千社札を貼ってはいけないので、ご遠慮くださいね)。
そして柱のキズですが、かつて田んぼ仕事を終えた人々が、お酒を飲む時に自分の鎌でケガをしないよう、この柱に鎌をかけていたことに由来するキズだそうです!安心して楽しくお酒を飲む工夫を感じますね。
シーンに合わせた酒づくり
武甲酒造では、香り高いお酒、軽快な味わいのお酒、原酒やお燗向きのお酒など、料理や飲みたい場面に合わせて日本酒を選べるという幅広いラインナップの酒づくりをされています。
社長の長谷川さん
「日本酒はどんな器でどんな飲み方をするのも自由。料理とのペアリングを考えてみたり、2種類のお酒を飲み比べてみるなど、色んな楽しみ方をしてほしい」と、長谷川さん。
秩父に来ないと味わえないお酒も…
現代では、オンラインで気軽に全国各地の日本酒を購入することができますが、基本的にはその土地に根ざした酒づくり、その土地で暮らす人々に愛される地酒というシンプルなもの。
武甲酒造でつくるお酒も地元・秩父で飲まれることがほとんどだそうです。その地域でしか飲めない、手に入らないお酒があるというのもロマンがありますね…
早速!酒蔵見学スタート
酒蔵だからできる街の防災
武甲酒造の井戸
武甲酒造では、敷地内にある井戸水を地域住民や観光で訪れた方たちに無償で提供しています。阪神淡路大震災が起きた際、兵庫の灘で酒づくりをする長谷川さんの友人に「人は水がないと生きていけない。地域住民に水を提供するのが今の仕事だ」と言われたそうです。
井戸水を飲みに来る観光客やロードレーサー
以降、災害が起きた時に備えて秩父市とともに災害指定井戸制度をつくり、日常的にも井戸を開放しています。「私たちには井戸水がある。酒をつくるための米もある。煮炊きに必要なガスもある。地元に育ててもらっているからこそ、地元に恩返ししたい」と長谷川さんの素敵な思いが伝わります。
湧き水
一升瓶を1本つくるためには、その30倍の水が必要と言われています。道具の洗浄、洗米、そして仕込み…全ての元となるのは井戸水。特別に井戸水でつくられた氷も食べさせていただきましたが、なめらかな口どけでした。
土蔵
すべて丁寧な手造りにこだわっています。また、多くの蔵は鉄骨や鉄筋コンクリートを採用していますが、こちらは土蔵です。土蔵は外の気温に影響されにくいため、蔵の中の温度を一定に保つことができ、お酒にとってもよい環境ができるのです。200年を超える歴史を持つ蔵を大切に守り続けながらの酒づくりです。
埼玉県初!非対面式の利き酒機
新型コロナウイルス感染防止のため、2020年から導入された最先端の利き酒機!利き酒をする前に検温し、使い捨てのカップを自分で取ります。
試飲するお酒も、機械のボタンを押すだけなのでとても簡単。徹底した温度管理がされていて、酸化しないように窒素ガスが充填されるので、ベストな状態のお酒を味わうことができます。これは嬉しいですね!
武甲酒造で購入できる魅力的な商品
七種の酵母を使った珍しい日本酒「彩虹」
埼玉で開発された7種類の酵母(レインボー酵母)を使った珍しい日本酒「彩虹」!秩父で生産された山田錦100%使用の純米大吟醸という贅沢な1本です。
口当たりはやわらかく、少し甘く感じるような味わい。今まで出会ったことがないような香りのハーモニーを楽しめます!
酒蔵の麹水
「酒蔵の麹水」というこちらの商品は、乾燥麹がパックに詰められているものです。これを水に入れて数時間置いておくだけで、あっという間にアミノ酸や酵素が溶け出した麹水の完成!
腸内環境を整えたい方におすすめですよ〜。酒造用の高精白米の麹なので、臭みがなくてスッキリしています。
「武甲正宗」をお家で頂きます♪
私が家飲み用にお持ち帰りしたのは「武甲正宗」の大吟醸。しかも…令和2年のものと令和3年のものを2種類飲み比べしてみます!長谷川さんによると、わざわざこのお酒を買いに秩父まで来る方もいるほど、根強いファンがいるそうですよ。
向かって右側の令和2年のほうには「全国新酒鑑評会 入賞酒」とありますが、これは新型コロナウイルスの影響で金賞を選定しなかったため。左側の翌年では見事金賞を受賞されました!
令和2年の「武甲正宗」大吟醸には香草焼き
まずは、令和2年から。色はクリアで、香りはフルーティーで華やかな印象です。ワイングラスで飲んでみたのですが、鼻をぐっとグラスの中に入れてみると、少しツンとするようなアルコール感もありました。
飲んでみると…じんわりとした甘さが広がって、最後にスーッと辛さがきて味がしまる感じです。 組み合わせた料理は、真たらの香草焼き。淡白なお魚と複雑味のあるスパイス、やや辛口な武甲正宗との相性が最高です!
令和3年の「武甲正宗」大吟醸には天ぷら
続いて、令和3年。色は同じくクリアで、フルーティーな香りはあるのですが、とても穏やかで優しい印象です。飲んでみると…やわらかくて上品な甘さの中に、スッキリとした辛さも持ち合わせていて、飲みやすい!個人的には、こちらのお酒のほうがさらっといけるなぁと感じました。
組み合わせた料理は、野菜の天ぷら。素材の味を活かした料理との相性がいいそうですよ。たしかに、舞茸やさつまいもなどの味わいも残しつつ、武甲正宗が口に残った油っぽさを流してくれて心地よい…。季節によっては山菜の天ぷらもおすすめ!