【熟成酒のペアリング】玉川 Time Machine Vintage 2016BY × サーモンのムニエル セミドライトマトとタイムのレリッシュ
今回の熟成酒は、全国でも熟成酒に力を入れていることで有名な京都府の木下酒造の日本酒。京都と言えば伏見の酒蔵の月桂冠、黄桜などが有名ですが、木下酒造は京都北部の京丹後市に位置しており、伏見のお酒とは全く異なるアプローチでお酒を醸されています。
それでは、早速、熟成酒について見ていきましょう!
熟成酒『玉川 Time Machine Vintage 2016BY 』
玉川 Time Machine Vintage 2016BY
今回の熟成酒は「玉川 Time Machine 1712」。醸造後3年間熟成されたお酒です。銘柄名にもあるTime Machine 1712というのは、江戸中期(1712年)に編纂された『和漢三才図会』に記されている造り方を現代に復刻したという意味が込められています。
熟成酒の造り方のこだわり
仕込み方法は現代とは異なる江戸時代流の生酛造りを採用し、驚くことにイギリス人の杜氏であるフィリップ・ハーパー (Philip Harper)氏が復刻しました。
また、木下酒造の酒造りは熟成までが造りの工程に含まれていると言っても過言ではなく、商品のほとんどを熟成させてから出荷されています。しかも、常温管理・常温熟成を中心とされており、全国でも極めて珍しい酒蔵です。
これは、杜氏の酒造りの思想によるもので、玉川は「変化が面白いお酒」とされています。一般的な日本酒の概念では、日本酒はデリケートなものなので、低温管理、低温流通させ、「変化=劣化」としていますが、玉川ではその変化を楽しめるお酒を醸されています。
玉川 Time Machine 1712
玉川 Time Machine Vintageを熟成させる前の日本酒です。熟成する前から淡い琥珀色をしています。昔、料理と合わせた時は、酢豚や牛すじの煮込みに合いました。こちらのお酒は、2017年にイギリスの新聞「インディペンド」で、イギリスで推奨する日本酒10本の中で1位に輝いた銘柄となっています。
熟成酒のラベル情報
アルコール度数は、14度以上15度未満なので、やや低アルコールとなっています。精米歩合は江戸時代の酒造りの再現なので、精米歩合は88%とほとんど磨いていません。
当時の酒造りが描かれた古文書のイラストがラベルとなっています。よく見てみると、玉川のキャラクターも混じっていたり、遊び心があります。
熟成酒のテイスティングコメント
※このチャートは熟成酒の味わいのバランスを表しています。
冷酒でのテイスティング
熟成酒の色合い
琥珀色がかった浅煎りコーヒーのような色調。
熟成酒の香り
マッシュルーム、メープルシロップ、醤油、八丁味噌、デーツ、ビターチョコのような様々な香りを感じます。複雑な香りなので、人によって様々な感じ方をされると思います。
また、熟成酒はオフフレーバー(劣化臭)と言って、カビ臭、獣臭、納豆臭、チーズ臭などの香りを少なからず感じることがあり、基本的に熟成酒をワイングラスで飲むのはNGなのですが、この熟成酒はほとんどオフフレーバーを感じませんでしたので、ワイングラスで楽しむことができます。
熟成酒の味わい
甘味主体で、メープルシロップを鮮烈に感じ、カラメル感があります。また、苦味や旨味も豊かで全体的にボリューム感のあるお酒ですが、アルコール度数がやや低いというものもあり、飲み疲れする感じはないです。
今回、あえて常温ではなく冷酒でテイスティングをしたのですが、甘味を丁度いい具合に抑えられていて、食中酒として、幅が広がる印象を受けました。
60℃の燗でのテイスティング
味わいボディがしっかりしていたので、お湯の温度を高くし早く燗をつけました。全体的なバランスが整い、お酒単体でしっぽり飲めるようになりました。全体的なバランスが整った分、料理と合わせなくてもお酒単体で完成されたような味わいとなりました。
合わせたい料理
合わせてみたいほっくほくの焼き芋
今回、非常に多くの料理がイメージ出来ました。キノコ系の香りから秋を連想させられ、秋の季節の食材と合わせたいと思いました。例えば、さつまいもを使って焼き芋やスイートポテトと合わせたいと感じました。
さつまいも以外にも合わせてみたい料理は…?
カツオの藁焼き、鴨のコンフィ、ミルフィーユ、カヌレ、ナッツ類、セミドライトマトとも合うと思います。
料理の考案
今回は、お酒の旨味とセミドライトマトの旨味を合わせた料理を考えてみました。この熟成酒の最大の特徴は、通常の日本酒にはない旨味にあるので、その長所を生かしたペアリングが良いかなと判断しました。
セミドライトマト:乾燥トマトのオリーブオイル漬け
料理の素材について
セミドライトマトは、ソースとして掛けて食べるのが良いと思ったので、レリッシュを作ることにします。また、熟成酒は油脂と合うことが多いので、メインの食材には脂身の多いアトランティックサーモンを使用することにしました。
サーモンのムニエル セミドライトマトとタイムのレリッシュのレシピ
材料(2人分)
お好みの季節の野菜 ・・・・適量
塩 ・・・・・・・・・・・・適量
小麦粉 ・・・・・・・・・・適量
【セミドライトマトとタイムのレリッシュ】
玉ねぎ ・・・・・・・・・・50g
セミドライトマト ・・・・・60g
オリーブオイル ・・・・・・100g
タイム ・・・・・・・・・・2枝
シェリービネガー ・・・・・80g
(無ければバルサミコ酢でも可)
EXVオリーブオイル ・・・・・20g
塩 ・・・・・・・・・・・適量
作り方
①サーモンは下味の塩をしてしばらくおいておく。
②レリッシュを作る。フライパンにオリーブオイルを入れて、みじん切りにした玉ねぎと枝から取ったタイムの葉を加えて炒める。
③玉ねぎにある程度火が入ったら、刻んだセミドライトマトを加えてさっとソテーする。シェリービネガーを加えて、煮詰めながら加熱する。仕上げにEXVオリーブオイルを加えて、塩で味を整える。
【ポイント】
セミドライトマトの味わいをもっと出したい時は、細かくみじん切りにしたセミドライトマトを加える。みじん切りにすることで、レリッシュ全体にセミドライトマトの味が広がる。セミドライトマトの味が少し濃いと感じくらいが熟成酒と良く合う。
④サーモンの余分な水分をペーパーで拭き取り、両面に小麦粉をつける。フライパンにオリーブオイルを入れて温め、サーモンを入れて焼く。
⑤香ばしい焼き色が両面につくようになるべく動かさずにじっくり焼く。サーモンを焼いているフライパンの隙間でお好みの季節の野菜を焼き、塩を適量ふる。
⑥ムニエルにしたサーモンと焼いた野菜をお皿に映し、レリッシュを盛り付ける。仕上げにタイムなどのフレッシュハーブをちぎって散らして完成。
ペアリングの感想
セミドライトマトのレリッシュが熟成酒と非常に良く合いました。また、シェリービネガーを使ったのも非常に良かったです。
今回の熟成酒は酸味はそれほど無かったので、料理と合わせたときにシェリービネガーの酸味によって全体のバランスが整い、見事に調和していました。
ちょっとしたアドバイス
今回のペアリングでは、熟成酒を冷やして料理と合わせました。冷やすことで強めの甘さを抑えることができ、料理とのバランスをより整えることが出来て、とても良かったです。
余談
バニラアイスクリームに熟成酒を掛けてみました。王道の合わせ方ですが、この熟成酒はしっかりとした味わいなので良い相性でした。
これから夏本番になり暑い季節が続きますので、熟成酒と一緒にご自宅でちょっぴり贅沢なアイスクリームを堪能してみてはいかがでしょうか。ペアリングを楽しんだ後のデザートにとてもオススメです。