【熟成酒のペアリング】旭日 猪鹿鳥 ✕ トマトすき焼き
今回の熟成酒は15年以上も熟成している長期熟成酒。ロマン溢れるように言うならば15年以上もの時が溶け込んだお酒になります。
皆さん15年前は何をされていたでしょうか。どんな時代だったか少し調べてみると、流行語では「イナバウアー」「品格」「ハンカチ王子」「ミクシィ」「たらこ・たらこ・たらこ」などが流行っていた時代でした。その当時のことを思いながら味わうのも熟成酒の醍醐味の1つかと思います。
今回もそんな熟成酒で料理とのペアリングを提案していこうと思います。レシピも公開していますので最後まで読んでいただければ嬉しいです。それではまず、今回のお酒の紹介からいってみましょう!
熟成酒について
今回、料理とのペアリングを考える熟成酒は、滋賀県愛知郡愛荘町に位置する藤居本家の銘柄「旭日 猪鹿鳥」。(マップの25番の蔵元です)
引用:滋賀県酒造組合ホームページ(https://shiga-sake.net/)
今回の熟成酒は、滋賀県を中心に栽培されている「玉栄(たまさかえ)」という品種の酒米で造られており、滋賀県の日本酒ではよく使われる酒米です。この酒米は、新酒ではあまり味が乗らない傾向にありますが、熟成によって味が伸びてくることから、熟成させてからリリースされるような銘柄やキレのある日本酒に使われることが多いです。
新嘗祭の御神酒
この蔵元は、先代が設計した樹齢700年を超える欅の巨木柱が特徴的な蔵が有名で、また、宮中祭祀の新嘗祭で御神酒を献上している蔵元になります。
30年以上熟成した日本酒
この蔵元では、他にも熟成酒を商品化されており、中には30年以上熟成したものもリリースされています。お酒を熟成させるにはお酒を熟成する場所や設備、在庫として商品を抱えなければいけない等、コストが掛かるので、10年以上も熟成させている蔵元はなかなか珍しいです。
熟成酒のテイスティングコメント
※このチャートはこのお酒の味わいのバランスを示しています。
常温でのテイスティング
熟成酒の色合い
色調は、良く熟成していると感じさせる琥珀色。
熟成酒の香り
上立ち香は、カラメル、マッシュルーム、腐葉土、椎茸、ヨード香、生ハムなどの香り。 ネガティブな香りとしては、やや獣臭を感じます。
熟成酒の味わい
味わいは、淡い口当たりですが、ややボディ感があります。ちょうどいい甘味と苦味を感じます。色調ほどの味わいのインパクトはなく、全体的にバランスの良い味わいです。余韻は短いですが、戻り香で獣臭を感じます。
60℃の燗でのテイスティング
銅のチロリで燗をつけました。温度を上げると獣臭がより強く立ってきました。例えるなら、牛小屋の匂いのような感じです。このオフフレーバーが苦手な方には少し厳しい香りかもしれません。
味わいは、苦味があまり感じなくなり、甘味と酸味が立ってきて親しみやすくなりました。
合わせたい料理
熟成酒全般に言えることですが(特に長期熟成酒)、熟成酒はメイラード反応により熟成が進んでいるので、料理もソテーして(メイラード反応させて)焦げている部分と合わせるのがベターだと思います。また、これも長期熟成酒に言えることですが、お肉の脂ともよく合うので、和牛のステーキと合わせたりするのも良いと思います。
ステーキや根菜類のソテーも試したいペアリング
今回の熟成酒は土っぽいニュアンスもあるので、根菜を使った料理とも合いそうです。
例えば、シェリービネガーの根菜のソテーなんかが面白いです。根菜も煮たりするよりも、ソテーさせて焦げ目があるほうが合うと思います。
料理の考案
料理の素材について
このお酒の裏ラベルには、ジビエやバニラアイスクリームに合うと書かれていますが、ジビエの入手難易度のハードルは高いので、入手しやすい牛肉で合わせてみます。
気になる調理法
牛肉を使ってどんな料理にするかですが、煮込んだりするよりも焦げ目を付けて焼いた肉のほうが合うと思うので、今回は、すき焼きにしてみようと思います。
ただ、普通のすき焼きでは面白くないので「トマトすき焼き」に。トマトのアミノ酸であるグルタミン酸とアスパラギン酸も熟成酒と合うはずです。
トマトすき焼きのレシピ
材料(2人分)
大玉トマト ・・・・・・ 1個
玉葱 ・・・・・・・・・ 1個
米油 ・・・・・・・・・ 大さじ1
【割下】
味醂 ・・・・・・・・・ 150cc
日本酒 ・・・・・・・・ 75cc
濃口醤油 ・・・・・・・ 35cc
作り方
① 割下を準備する。小鍋にみりんと酒を合わせて強火にかけ、沸騰したら弱火に落として1分ほど加熱し、最後に醤油を加える。冷ましておく。
② トマトはくし切りにする。
③ 玉葱は縦に反分に切り、繊維を絶つように1cm幅に切る。
④ 米油大さじ1を中火で熱したすき焼き鍋に入れる。
⑤ 玉ねぎを加て軽く火を通したら、トマトも加える。
⑥ 鉄板に隙間をあけ、牛肉を1枚入れて、牛肉の片面を香ばしく焼く。
⑦ 割下を加える。
⑧ 後は、肉を入れたり、トマトを足したり、自由に食べる。 ※割下が静かに沸いている状態を保つように火加減を調整しながら食べる。
ペアリングの感想
狙い通り肉の脂とお酒が良く合いました。また、料理とお酒の甘い部分が引き寄せ合い、お酒の甘味が欲しくなり、お酒が凄く進みます。気がついたらお酒がなくなっていました。
トマトが入ると水分と酸味が入るので、あっさりさっぱりした味になります。甘さがスッキリするので、甘い日本酒が入ってくる余白が生まれることにより、お酒が進むペアリングとなりました。
ちょっとしたアドバイス
お肉にトマトをジャムの様に添えて食べるとちょうどいい塩梅になり、思わず舌鼓を打ってしまいます!
余談
手毬風玄米おにぎりの生ハム包み
生ハムとも合うと思ったので、「手毬風玄米おにぎりの生ハム包み」とも合わせてみました。生ハムの上には生黒胡椒のペーストを乗せているのですが、この胡椒が熟成酒にすごく合いました。(粗挽きの黒胡椒でも合いました)このお酒のネガティブな香りである獣臭を黒胡椒が包んでくれて、あまり気にならなくなりました。
料理で例えるなら、煮魚を作る際に臭み消しに生姜を使うことがあると思いますが、今回、それと同じことを口の中で行っていました。お酒の臭みを物理的に取り除かなくても、スパイスを使うことで脳で臭みを感じさせなくし、臭みとスパイスの香りを脳内で置き換えることによって、このペアリングが実現していたように思います。
ネガティブな香りであっても、合わせる料理によっては、ポジティブにペアリングさせることが出来る良い例となりました。 良ければみなさんも色々試してみてください!