【地酒ってなに?】一気に解決!日本酒だけでなくワインやビールにも地酒がある
居酒屋や酒屋に行くと「おすすめの地酒ありますよ〜」と声をかけられたり、ポップアップで「〇〇県の地酒」と目にする機会も多いのではないでしょうか。
「地+酒」なので、なんとなく「その土地のお酒」なのかな?と連想することもできますが、日本酒と地酒って何が違うんだろうと疑問に思いますよね。
今回は日本酒専門のWEBメディアを運営している私達が、「地酒」の歴史や、地酒ブーム、そして日本の有名な地酒について紹介していきながら、日本酒だけでなく、地酒として楽しめる、ワインやクラフトビールの豆知識も紹介しています。
地酒とは何か?
まずは「地酒」とは何か?なぜ地酒と呼ぶのか?を解説する前に「地酒の定義」から紹介します。
地酒とは、「特定の地域で造られ、全国的に流通していないお酒」のこと。
なるほど!地域限定で販売されているお酒なのかな?と想像できそうですね。
ちなみに、「地酒」を辞書で引いてみると、
その地方でつくられる清酒。特に、灘(なだ)や伏見(ふしみ)を除いた地方のものをさす。
灘と伏見を除いた地方の清酒を地酒と呼ぶのか。。?なぜ、灘と伏見を除いた地方なんでしょうか?まずは、灘(なだ)と伏見(ふしみ)の特徴を知ると、地酒についてグッと理解が深まりそうですね。
灘と伏見の日本酒
兵庫県の灘(なだ)、京都府の伏見(ふしみ)は2大酒処として、古くは江戸時代からお酒造りが盛んな地域なんです。
現在でも都道府県別では兵庫県が全国1位、京都府が全国2位の日本酒(清酒)の生産量を誇っています。灘と伏見には大手メーカーの酒蔵が点在し、そこで造られた日本酒は全国へ流通し、スーパーやコンビニでよく見かけることができます。
一般的に認識されている「地酒」とは、こうした大手メーカーや、有名な酒処(灘や伏見)を除いた場所で造られているお酒を指すことが多いです。
ただし、実は「地酒」のはっきりとした定義は決まってはいないのが現状で、例えば近年に全国区になった酒蔵などは「地酒?日本酒?」と迷うことも多々あります。
ちなみに、過去の記事では灘と伏見の大手メーカーのお酒を紹介しています。
灘エリア:「ワンカップ大関」
>>関連記事:【ワンカップ大関まとめ】お燗やアレンジの楽しみ方をまとめました!あのカップ酒は日本初の大発明!
伏見エリア:「白鶴酒造」まる
>>関連記事:日本酒「白鶴 まる」 3種類飲み比べてみました!食事と一緒に楽しめるお酒
地酒ブームがやってきた!
つまり地酒とは、全国に流通していない、その土地でしか飲めないお酒。特にインターネットが生活に根付く以前は、よっぽどの日本酒ファンで無い限り、生産地域周辺以外のお酒を知る機会は少なかったと想像できますね。
そして1970年代から消費者の意識も変化し「地酒=全国に流通していない、いわば希少なお酒」と認識されるようになり、逆に人気のきっかけになりました。
つづいては「地酒ブーム」として脚光をあびることになった「淡麗辛口ブーム」と「吟醸酒ブーム」を紹介していきます。
新潟県の地酒「淡麗辛口ブーム」
新潟の日本酒といえばスッキリした味わいの「淡麗辛口」の日本酒です。
灘や伏見のお酒と違った「辛口なお酒」を全面にブランディングしたことで、1970年代から「淡麗辛口ブーム」がおこり、上越新幹線の開通も後押ししたことで、今では全国第3位の日本酒(清酒)生産量までになりました。
新潟の地酒をもとめ、いざ新潟へ!
地酒「吟醸酒ブーム」
新潟の地酒ブームのあと、1980年代〜1990年代前半に起きたのが「吟醸酒」ブームです。
現在でも人気のある「吟醸酒」は、従来の日本酒とは一線を画し「華やかな香り」と「フルーティーな味わい」が人気となり、日本酒に馴染みのなかったユーザーからも受け入れられ、「吟醸酒」ブームが起きました。
普通酒に比べ、原材料のコストも高く、小さい酒蔵ならではの、手作業で手間暇をかけた日本酒は「希少性」ということあり、バブル期の贅沢なものを求める需要、いわゆる高級なお酒として注目されました。
華やかなでフルーティーな味わい
「吟醸造りの日本酒」
「地酒」気になる現在は?
現在でも、新潟の淡麗辛口の日本酒や、東北地方を中心とした「吟醸酒」は日本酒ファンの中でも人気がある地酒です。
では、現在注目されている「地酒」はどういうタイプなのかと考えたときに、最新設備を使って大量生産される日本酒ではなく、いわゆる原点回帰の伝統的な製法で日本酒を造る酒蔵、また地産地消の想いから、酒蔵の近くで収穫された原材料を使い、持続可能なお酒造りを続けている酒蔵が注目されています。
秋田県の新政酒造、千葉県の寺田本家、福島県の仁井田本家など、伝統的な手法でお酒造りと向き合う姿は、環境問題や持続可能な社会を考えさせられるきっかけになります。
【地酒】日本酒と清酒との違い
地酒の紹介でも出てきた「清酒」というキーワード。居酒屋や酒屋でも見かけることも多いと思います。つづいては、日本酒と清酒の違いを解説していきます。
地酒と同様にまずは「清酒」について辞書を引いてみましょう。
清酒の定義
米・米麹 (こめこうじ) を原料として発酵させ漉 (こ) して製した、日本特有の澄んだ酒(アルコール分が22℃未満)。
原産地の指定はなく、「清酒」とは海外産を含め、米、米こうじ及び水を主な原料として発酵させてこしたものを広く指す言葉です。そのため、海外で生産された清酒は「日本酒」と呼ばれないことになります。
清酒と表記された「フランス産のお酒」
日本酒の定義
「日本酒」は清酒の中でも、日本国内産の原料を使用し、日本国内で造られたものを指します。
そのため、海外産の米を使用したものや、海外で製造された清酒が国内に輸入されたとしても、「日本酒」と表示することはできません。
「日本酒」という呼称は地理的表示(GI)として、国全体として2015年12月に指定を受けています。
※GIについてはこちらで詳しく解説しています。
>>関連記事:日本酒のGI(地理的表示)ってなに?GI利根沼田オンラインシンポジウムでGIを学ぼう!
日本酒の代表的な地酒
地酒の定義や歴史、日本酒と清酒の違いを学んだ後は、日本酒の代表的な地酒を3つ紹介したいとおもいます。
新潟県の地酒
淡麗辛口な日本酒が有名な新潟県の地酒。「日本酒といえば新潟でしょ!」と思っている日本酒ファンの方も多いのではないでしょうか。地酒の代表格として確固たる地位を築いた新潟県は、全国区で第3位の日本酒(清酒)の生産量を誇っています。
「八海山」や「久保田」は新潟県を代表とする地酒です。
新潟の地酒「八海山」
地酒「八海山」と一緒に食べたいご当地グルメ
まいたけ多めのキノコ鍋
八海山醸造のある新潟県南魚沼市は米どころとしても有名な地域。また南魚沼市といえば雪国まいたけ。市内の工場で栽培された「まいたけ」をふんだんに使ったキノコ鍋はいかがでしょうか。
山形県の地酒
山形県の地酒といえば「吟醸造りの日本酒」。県内に点在する酒蔵は50ヶ所以上あり、「吟醸王国」として⾼級酒やフルーティーな⽇本酒が多いのが特徴です。
また山形県は県全体として地理的表示(GI)の指定を受けています。原産地を特定する「山形」の名を冠して販売している日本酒は「地酒」と呼ばれるに相応しいお酒です。
山形の地酒と一緒に食べたいご当地グルメ
板そばと地酒を堪能しましょう!
地酒だけなく「そば」も有名な山形県。特におすすめなのが、山形県の内陸で人気の長い板の上に1人~数人前のそばを盛り付けた「板そば」。更科そば、へぎ蕎麦に比べて、麺が黒くて太いのが特徴です。そば本来の豊かな風味と地酒を一緒に楽しんでみてはいかがでしょうか。
長野県の地酒
長野県は山形県同様に県全体として、原産地を特定する地理的表示(GI)の指定を受けています。
指定基準はGI山形よりも厳しく、長野県内で収穫した基準を満たしたお米を使用し、県内で採取された水を原料とし、県内で製造、貯蔵、容器詰めを行っている日本酒となっています。
7号酵母発祥の長野県にある「宮坂醸造」
長野の地酒と一緒に食べたいご当地グルメ
長野県を中心に栽培されているのが、信州菜とも呼ばれる野沢菜。「野沢菜=野沢菜漬け」ともいえるほど、野沢菜漬けは野沢菜を使った定番郷土料理です。
野沢菜漬けをつまみに地酒を飲んだらもう止まらない!お腹が空いたら白米にのせて食べてもいいですし、飲んだ後の締めにお茶漬けはいかがでしょうか。
また、長野県では日本酒のGI指定と同時にワインもGI指定されています。「うん?もしかして、地酒って日本酒以外のお酒も該当するの?」と疑問に思いますよね!
地酒=日本酒と考えてましたが、そんなことはないんです。つづいては、日本酒以外の地酒について紹介していきます。
日本酒以外にもある「地酒」
ここで、もう一度「地酒」の解説を思い出していただきたいです。一般的な地酒は「特定の地域で造られ全国的に流通していないお酒」でした。
地酒≒日本酒として認識されている方も多いと思いますが、クラフトビールやワインといった、その他のお酒も「地酒」と呼ぶことができます。
ワイン(ぶどう酒)
長野県はワイン王国としても有名で、ワイン(ぶどう酒)も厳しい審査を実施し、地理的表示(GI)の指定も受けています。
長野県の他にも、山梨県、北海道、山形県、大阪府がGI指定を受けています。ワインの地酒として楽しんでみてください。
クラフトビール
スーパーやコンビニでも見かける機会が増えてきたクラフトビール。クラフトビールの概念は地酒と重なる点が多いです。それではクラフトビールについても辞書を引いてみましょう。
クラフトビール (英語: craft beer) とは、英語で「職人技のビール」「手作りのビール」などを意味する表現で、大手のビール会社が量産するビールと対比して用いられる概念。日本語ではクラフトビアと表現されることもある。地ビールとも呼称される。
まさに地酒の「一般的な地酒は特定の地域で造られ全国的に流通していないお酒」という概念と似ていますね。マイクロブリュワリーと呼ばれる、超小型の醸造所からスタートすることも多く、地酒としてクラフトビールも楽しみたいですね。
地酒のまとめ
今回は地酒について、言葉の定義や、地域の特性や種類、そして日本酒だけでなく、ワインやクラフトビールについても紹介してきました。最後にこの記事のまとめを紹介いたします。
- 地酒とは、「特定の地域で造られ、全国的に流通していないお酒」
- 日本酒では大手メーカーが多い、兵庫県の灘(なだ)、京都府の伏見(ふしみ)以外のお酒を指すことが多い。
- 地酒ブームで話題に上がったのは「新潟県の淡麗辛口な日本酒」や「華やかでフルーティーな吟醸酒」
- 日本酒だけでなく、ワインやクラフトビールなどその他のお酒も地酒(=特定の地域で造られ全国的に流通していないお酒)がある。
地酒の特集いかがでしたか??なんといっても地酒の楽しみは、お酒が造られているその地域に行くこと。ぜひ、お気に入りの地酒を探して楽しんでみてください。