全量純米酒仕込み「扶桑鶴」日本酒発祥の地島根県の酒蔵へ訪問!

日本酒の中で最も旨みとコクがあり、お米や米麹由来のふくよかな香りを楽しめる純米酒。そんな純米酒を全ブランドで採用している島根県の酒蔵「桑原酒場(くわばらさかば)」。

創業当時から愛される代表銘柄「扶桑鶴」は燗上がりの日本酒として全国区で人気があります。普段は一般公開されていない酒蔵を見学しながら日本酒造りにかける熱い思いや今後の展望について取材してきました。

扶桑鶴と蔵元「桑原酒場」について

酒蔵訪問_扶桑鶴 島根県益田市で日本酒造りを営む桑原酒場(正式名称:株式会社桑原酒場)。益田市は島根県の西端に位置し山口県と県境を接しています。日本酒の仕込み時期は5℃〜7℃まで下がり山間部は最西端の豪雪地帯。

特産品の「鮎」や「わさび」は酒蔵近くを流れる高津川で生育されています。この高津川を流れる清らかな伏流水を「仕込み水」として使用する桑原酒場。風土や気候が日本酒造りに適した地で全量純米酒の日本酒造りをしています。

創業110年以上の歴史をもつ桑原酒場

酒蔵訪問_扶桑鶴

蔵元の大畑朋彦さん

創業明治36年(1903年)に誕生した桑原酒場。代表銘柄「扶桑鶴」は長寿のシンボル「鶴」と、日本(扶桑)を代表する日本酒として鶴のように羽ばたいて行きたいという思いを込められ名付けられました。現在は4代目の大畑朋彦さんが蔵元です。

清流日本一「高津川」が育む豊かな水

酒蔵訪問_扶桑鶴

桑原酒場近くを流れる「高津川」

「水」は日本酒の多くを占める重要な成分であり「名水あるところに銘酒あり」と言われるほど「水」はお酒造りにとって大切な要素です。日本酒に含まれる水だけでなく、お米を洗う「洗米」などにも醸造用水として使われ、お酒造りには大量の水が必要になります。

「水」は自然が育んだその土地ならではの賜物であり、その性質の違いが各酒蔵で造られる日本酒の個性に影響します。

桑原酒場近くを流れる高津川は「清流日本一」に輝いた水質が最も良好な河川として評価されています。その高津川の清らかな伏流水を蔵敷地内の井戸から汲み上げて使用しています。水質はミネラル分が少ない軟水であるため、発酵が緩やかに進み柔らかな酒質に仕上がるそうです。

純米酒作りにかける熱い思い

酒蔵訪問_扶桑鶴

日本酒の仕込み風景

桑原酒場では大畑さんが蔵へ戻る前からお米と米麹だけで作る純米酒造りを続け、「料理との相性が良く、ゆるゆると飲める食中酒」を目指したいと大畑さんは語ります。

お米本来の味を目指した日本酒造り

酒蔵訪問_扶桑鶴

杜氏の寺井道典さん

新酒時の味に惑わされずにしっかりと熟成させ、料理との相性を求めた結果、華やかな香りを求めず、旨み、味のまろやかさを楽しめる日本酒を目指している桑原酒場。

「一杯で終わってしまう日本酒ではなく、一口では物足りないが、食が美味しくなり、ついつい杯がすすむ日本酒を目指しています。」

最近の流行りはグルコース濃度(ブドウ糖)の高い甘い日本酒。華やかな日本酒で飲みやすいと言われる一方で一緒に食べる料理を選ぶ傾向があります。その一方、扶桑鶴のような食中酒として楽しめる純米酒は、料理との相性の幅も広く、気が付いたら何杯も飲んでしまう日本酒です。

「扶桑鶴は冷やして飲むだけでなく、常温、お燗など様々な温度帯で楽しめる日本酒。ぜひお燗にして飲んでみてください。」

燗上がりの日本酒として全国区で有名な扶桑鶴。燗上がりとは温めることでグンと美味しさがのる日本酒で旨みがしっかりある味わいです。

コロナウィルスで大打撃を受けた蔵元

2020年から猛威を奮っている新型コロナウィルス。2020年4月に発令された1回目の緊急事態宣言以降、飲食店の休業が相次ぎ日本酒業界全体で大きな打撃を受けています。

「出荷の影響が出始めたのが2020年3月下旬からです。当蔵は地元、県外の出荷が半々で、地元の出荷量は例年に比べ減少が緩やかでしたが、特に大きな影響があったのが県外への出荷です。2020年4月は県外出荷が4割減、5月は8割減となり全体で5割出荷が減りました。2021年の仕込みも本来であれば9種類製造する予定でしたが、仕込んでも貯蔵できるスペースが無いため4種類のみ製造する決断をしました。」

仕込み量は毎年12月頃に翌々年の原材料を確保する必要があります。コロナウィルスの影響で先が見えない中、酒米農家にも大きな影響が出ているそうです。

「家庭用の日本酒(パック酒)の売上は順調のようですが、扶桑鶴は飲食店で飲まれる銘柄が多く、飲食店が休業になると影響が大きいですね。」

桑原酒場だけでなく「地酒」として飲食店で飲まれる多くの酒蔵は同様に苦しい状況が続いています。そのため新たな取り組みを始める酒蔵も多く、桑原酒場も2020年から新しいチャレンジを開始しています。

コロナ渦の新たな取り組み

酒蔵訪問_扶桑鶴

6酒蔵協力のブレンド酒の販売

新型コロナウイルス感染拡大の影響で需要が落ち込んでいる日本酒を飲んでもらおうと、島根県内の6つの酒蔵がそれぞれの銘柄をブレンドした純米吟醸を製造。益田市の酒販店「金吉屋商店」が県内の取引先の酒蔵に呼び掛け6酒蔵が賛同し実現したプロジェクトです。

「島根県産米を使用した純米吟醸規格の特定名称酒を6銘柄ブレンドしました。コロナ禍で落ちこむ需要を喚起する狙いのほかに、日本酒の主原料である酒米の出荷量が落ち込んだ地元のお米農家を応援する目的もありました。6蔵のお酒がブレンドされた日本酒はそれぞれの良さを引き立てる深い味わいになり話題になったプロジェクトです。まだまだ先が見えない状況が続きますが、何かしら新しい取り組みをこれからもやっていきたいと考えています。」

オンラインの勉強会の開催

この他にも新たな取り組みとして、オンラインで酒販店や飲食店を対象に勉強会も開催しています。勉強会では酒蔵の紹介と共に、銘柄毎の美味しい飲み方やペアリングを中心に説明し、お店に足を運んだ消費者へ美味しい日本酒を届ける活動を続けています。

扶桑鶴の美味しい飲み方

酒蔵訪問_扶桑鶴 蔵元大畑さんに「扶桑鶴」の美味しい飲み方や一緒に食べると美味しい料理を教えていただきました。「燗上がり」の日本酒ということで銘柄毎のおすすめのお燗の温度もご紹介します。

扶桑鶴「純米吟醸 佐香錦」

扶桑鶴_純米吟醸佐香錦 ほどよく熟成され、お米の旨みのふくらみを感じます。繊細で優しい口当たりの日本酒です。

一緒に食べたい料理は、淡泊な味わいの白身魚の刺し身や塩焼き、塩味の焼き鳥がおすすめです。

温めるとさらに美味しい

お燗にするなら50℃がおすすめ。味の幅が広がり、優しさとまろやかさを感じやすくなります。

扶桑鶴「特別純米酒」

扶桑鶴_特別純米 バランス良く甘み、旨み、酸味を感じられる日本酒です。淡い熟成感があり、すっきりとした口当たり。温めるとさらに旨みとふくらみを感じられます。

一緒に食べたい料理は、出汁の効いた料理のだし巻き卵やおでんがおすすめです。

温めるとさらに美味しい

お燗にするなら60℃がおすすめ。酸味がまるく感じ、渋みが落ち着き、まろやかさのある淡い熟成味が膨らみます。

扶桑鶴「純米酒 高津川」

扶桑鶴_純米高津川 あえてお米を削らずお米の旨みを生かした純米酒です。熟成の味わいと酸のバランスが良く、毎日の晩酌用の日本酒として食中酒、燗酒に最適な日本酒です。

一緒に食べたい料理は、サバの味噌煮、煮付け、タレ味の焼き鳥がおすすめです。

温めるとさらに美味しい

お燗にするなら60℃がおすすめ。酸味が丸くなり、まろやかになり、熟成の甘みを感じます。

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SYULIPは、お酒の資格を有したバイヤーが全国の酒蔵を実際に訪れ、美味しいお酒を皆様にお届けしています。

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