重陽の節句に飲む「菊酒」とは?作り方やおすすめの日本酒を紹介
重陽(ちょうよう)の節句に飲まれる菊酒。日本酒と菊の花を使って作られるお酒ですが、毎日お酒を楽しむ方でも、あまり馴染みのないものではないでしょうか。
耳慣れない菊酒について、作り方や由来など詳しく解説していきます。
菊酒と言えば重陽の節句
重陽の節句に欠かせないのが菊酒。菊酒と重陽の節句がなぜ結びついたのか解説していきます。
菊酒ってどんな日本酒
菊酒とは、一つのものを指す言葉ではなく、風習や地域によってさまざまに存在します。菊酒を大きく分けると以下の三種類となります。
まず一つめが、日本酒に菊の花を浮かべたもの。グラスや盃などに菊の花を浮かべて、美しさを目で楽しむ飲み方です。
二つ目が、日本酒に菊の花を一晩浸けて寝かしたもの。日本酒に菊の花を入れ、一晩寝かせることにより、花の香りや成分を移して楽しむ日本酒です。
三つ目が、菊の花を仕込んだ水で造られる日本酒。
日本酒を造る際に使われる水に、下ごしらえとして菊の花をつけ置き、香りを移します。この水を使って造られた日本酒を菊酒と呼ぶこともあります。
他にも、焼酎の中に菊の花びらと氷砂糖を一緒に漬けて寝かせた、梅酒のようなスタイルのお酒のことも菊酒と呼ぶことがあります。
菊酒の由来と歴史
菊酒はもともと中国の発祥といわれています。
古代中国では逸話として、病弱な王様が菊を浸したお酒を飲み、長寿となり天寿を全うしたというエピソードや、菊の露を飲んだ子どもが不老不死の仙人になったという有名な話があります。
これらの言い伝えから、菊酒を楽しむ風習ができたとされています。
日本では重陽の節句と共に、奈良時代ごろに中国から伝わってきました。
最初は菊の花をお酒に浮かべて楽しむことがメインでしたが、平安時代から宮中の儀式となり、菊酒を飲むだけではなく、詩を作るなどの宮中の行事の一環として広まっていきました。
江戸時代には、重陽の節句を成人した女性の「後の雛(のちのひな)」としてひな人形と菊の花を飾りながら、長寿を願い菊酒で祝う風習が庶民にも広まっていったといわれています。
明治時代に暦が旧暦から新暦になった際、季節に合わないという理由から重陽の節句と共に菊酒を楽しむ風習は徐々に廃れていきました。
重陽の節句とは?
重陽の節句は、別名「菊の節句」とも呼ばれます。毎年9月9日に行われる、五節句のうちの一つ。
日本の暦には一年間に五つの節句があり、1月7日の人日(じんじつ)、3月3日の上巳(じょうし)、5月5日の端午(たんご)、7月7日の七夕と並ぶ節句です。
重陽の節句では、菊の花を眺めながら菊酒を飲む以外にも、栗など、秋の作物の収穫時期でもあるため、庶民の間では「栗の節句」として栗ご飯を食べて祝う風習がありました。
その他にも「9日にナスを食べると脳卒中の症状にならない」という言い伝えから、ナス料理を食べる風習もあります。
また、以下のような行事も行われていました。
- 菊の着せ綿 菊の花の鑑賞会前日に真綿をかぶせ、翌日の朝に菊の香と露を含んだ真綿で顔や体を拭き、無病息災を祈る
- 菊湯・菊枕 菊の花を湯船に浮かべ、菊湯として入浴したり、乾燥させた菊の花を枕詰めた枕で眠る。菊の花の香は邪気を払うといわれているため、こうした風習ができた。
- 菊合わせ 愛好家たちが大切に育てた菊を持ち寄り、その美しさを競う行事。現在でも各地で鑑賞会や品評会が開催されている
菊酒を飲むと体に良いって本当?
一般的に飲まれる機会の少ない菊酒。実は体に良いとされる成分が含まれており、菊の花自体が薬草として使われていることもあります。成分や効能などを解説します。
菊の花は薬草として使われていた
一般的に菊の花は、仏花や鑑賞花の印象が強いですが、中国では古来より不老長寿の薬草として親しまれており、日本でも生薬として漢方や薬膳に使われています。
菊酒以外の飲み物としては菊茶があり、乾燥させた食用菊を煎じて飲まれることがあります。
生の菊の花は絞って汁を取り出し、あかぎれやしもやけ、腫物などに効果があるとされ、患部に塗布して使われます。
また、菊の花は抗菌作用があるので、足の早いお刺身の盛り合わせの飾りにも用いられています。
菊酒の嬉しい効能
菊酒に使われる菊の花には、健康に良いとされる成分がたくさん含まれています。
抗酸化作用に優れているビタミンCやビタミンEなど、ビタミン類が豊富に含まれており、グルタチオンという解毒効果のある成分も含まれています。
また近年の研究により、菊に含まれるポリフェノールの一種であるクロロゲン酸やイソクロロゲン酸といった成分の、悪玉コレステロールの発生を抑える働きが確認されました。
そのため菊を食事に取り入れることにより、生活習慣病の予防にも効果が期待されています。
菊酒を作って楽しもう
爽やかな香りと華やかな見た目を楽しめる菊酒。作り方はシンプルで自宅でも簡単に作ることができます。そんな菊酒の作り方を解説します。
菊酒の作り方
菊酒は作り方がいくつかあります。最も簡単な方法は、良く洗った食用菊の花びらを数枚ちぎって日本酒に浮かべるというもの。
菊の花をちぎらず丸ごと使っても見た目が華やかになりオススメです。
菊の花の香りをしっかりとお酒に移したい場合は、花をお酒に浸して一晩漬けておくと良いでしょう。
菊酒におすすめの日本酒
菊酒は菊の花の香りを楽しむためのもの。菊酒を作るために使う日本酒はなるべく香りの控え目なものを選ぶとよいでしょう。
日本酒本来の香りが控えめのものというと、味も香りも豊潤さのない質素な味わいのように思えますが、そうではありません。
日本酒本来の旨味を残しつつ、濃厚な香りは抑えめになっていること。かつ口当たりが軽やかでなめらかな日本酒であることが求められます。
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菊酒を飲んで長寿を祝う(まとめ)
菊酒の作り方やおすすめの日本酒について紹介しました。菊酒は9月9日の重陽の節句を祝い長寿を願うために飲まれます。
お手軽に作ることができる上に、菊の花には体に良いとされる成分が含まれているので、自宅で作って楽しんでみてはいかがでしょうか。
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SYULIP編集部
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