リキュールとは?その起源から種類、そしておすすめの飲み方までわかりやすく紹介
幅広い年齢層に親しまれるリキュール。甘いスイーツのような印象がありますが、歴史が深く研究しつくされてきた文化でもあります。そんなリキュールについて解説します。
リキュールとは
リキュールとは原料に果実やナッツ類、薬草、香草などを用い、それらを溶かし込んでできるお酒のこと。
お酒の分類上は混成酒にあたります。用途は幅広く、飲料としてのお酒はもちろん、お菓子作りのアクセントとしても人気です。
リキュールの定義と語源
定義は日本では酒税法酒税法第3条21号によって「酒類と糖類その他の物品を原料とした酒類で、エキス分が2度以上のもの(清酒、合成清酒、焼酎、みりん、ビール、果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、原料用アルコール、発泡酒、その他の醸造酒、粉末酒を除く。)」と規定されています。
国税庁:https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/sake/abc/abc-other.htm
リキュールの語源はラテン語の「Liquefacere(リケファケレ)」のなまったものといわれています。
意味は「溶かし込む」であり、リキュールの製法そのままを表した単語です。また、ラテン語で「液体」を意味する「liquor(リクオル)」からきているともいわれています。
リキュールの起源と歴史
時は紀元前の古代ギリシャ時代。臨床医学の父と呼ばれた、医師のヒポクラテスが作っていたことで有名なリキュール。最初は薬草を浸け込んだ薬品として使われていました。ワインに薬草を溶かし込み、薬酒として完成させたものが起原といわれています。
しかしあくまで薬品であるため口当たりが悪く、味の飲みやすさや酸性度などを調整するために、はちみつなどが混ぜられていました。このような試行錯誤が元となりリキュールが作られていきました。
現在のリキュールはスピリッツなどの蒸留酒がベースであるため、古代のものとは異なります。
蒸留酒を造るための蒸留器は、11世紀以降に作られました。薬師や錬金術師の作る薬液「エリクサー」として、効能がある薬酒の開発がおこなわれていました。このような過程が今のリキュールに続いています。
リキュールの製造方法
リキュールの製造過程は4つ。①香味抽出、②ブレンド、③熟成、④ろ過・仕上げという行程を経て、私たちの目にするかたちのリキュールとなっています。
スピリッツをベースに、さまざまな過程を経て個性が引き出されます。
香味抽出には方法がいくつかあります。
「浸漬蒸溜法」では、ベースとなるスピリッツと一緒にリキュールの原料を単式蒸留し、植物の香気成分の濃度を高めて留出させます。主に精油分や生の果物の皮などを使用する方法です。
「浸漬法」は、ベースのスピリッツに原料を数か月ほど漬け込み、成分や香りをしっかり出す製法。「温浸漬」と呼ばれる温水に付け込む方法では、熱によって成分を溶け出させ、温度が下がったところでさらにスピリッツを加えて漬け込んでいきます。
「果汁法」では、スピリッツに果汁を直接混ぜ、香味液を作ります。「エッセンス法」は、果汁ではなく原料の成分や香料をスピリッツに溶かして香味液を作る製造方法です。
最初の工程である①香味抽出のどれかの過程を経て、②のブレンドの行程へ進みます。得られた香味液に甘みとなる糖類や色素などを加えて、味や見た目も仕上げていきます。
そして③の熟成の行程では、一定期間を置いて熟成させて香味を安定させます。さらにオリが発生し、これらをろ過することで、仕上げの段階まで進ませ、最後はフィルターでろ過し瓶詰となります。
リキュールの原料と種類、それぞれの特徴は?
リキュールの原料について
リキュールには以下の原料がブレンドされています。
①ベースのスピリッツ
②芳香性原料(香りの元)
③糖類(甘みの元)
①のベースとなるお酒はスピリッツ。蒸留酒であり高濃度のアルコールです。蒸留のためクセがなく、限りなく原料の香りの邪魔をしません。
②はハーブやスパイスなどが起原とされますが、現在では果物やナッツ類、バニラなどの種子系が人気となっています。他にもはちみつや卵黄、コーヒーなどさまざまなものがあります。リキュールの個性的な一面です。
③は砂糖やグラニュー糖を溶かしたシロップが主なもの。種類によってははちみつや花の蜜なども加えられています。その他にも、特有の色素や酸味料など、こだわりの原料が選ばれてリキュールの個を作ります。
リキュールの種類と特徴
果実系
果実系のリキュールは、フルーツの皮や果汁などを原料に作られているもの。果実独特の酸味や香りなど、文字どおりフルーティーな味わいが楽しめます。
柑橘系でも苦みは少なく、爽やかで飲みやすいのが人気のポイント。
特に女性に人気のリキュールは、カシスの香りを味わえる「クレーム・ド・カシス」。果実系は甘やかで香りも良く、飲みやすく作れるリキュールです。
薬草・香草系
古代ギリシャのリキュールの起原とされる薬酒が、そのまま現在でも造られていますが、さらに飲料としての発展により、スパイスやハーブの香りを楽しむようなものとなっています。
たとえば「カンパリ」や「イエーガーマイスター」などは、数種類のハーブで独特の風味に仕上げられています。薬草系はリキュールの起原に近いものとして、その多くが古い歴史を持っています。
ビーンズ・ナッツ・カーネル系(種子系)
アーモンドやココナッツ、カカオなどを使った種子系のリキュールも人気のもののひとつ。
コーヒーやチョコレート、バニラなど濃厚でコクのあるしっとりした甘さが特徴です。
コーヒー系のリキュールであるカルーアを使用したカクテル「カルーアミルク」やチョコレートリキュールに人気が集まります。
その他
近年作られたものが多いですが、とても人気のある種類のリキュール。
たとえばヨーグルトを使ったヨーグリート。乳製品特有の酸味と、こっくりとした飲み口、それでいて爽やかな風味が人気のお酒です。
他にもクリーム系や卵を使ったものもあり、脂肪分やタンパク質を含むリキュールは、少数派ではありますが人気の飲み方です。
リキュールのおすすめの飲み方や使い方
ストレート
香りも甘みも強いお酒だからこそ、ショットグラスで少しずつ味わうのもよいでしょう。スプーンでひと口ずつなめたり、角砂糖と一緒にデザートのように味わったりする飲み方も魅力です。
ロック
強さではなく柔らかさを味わいたい時におすすめ。強い甘みをひんやりとした口当たりで味わう飲み方は、まるでスイーツのような味わいに。
飲みやすくなるだけでなく、氷が溶けるに従って変化する味わいや、見た目の美しさ、氷の音も楽しめる飲み方です。
水割り・ソーダ割り
濃い飲み口が苦手なら、割って飲むと飲みやすくなります。濃さも好みのものに調整でき、ソーダで割ればストレートや水割りとは違った刺激的な味わいになるでしょう。クレーム・ド・カシスなど、リキュールの種類によっては水割りがおすすめのものもあります。
カクテル
リキュールといえば定番のカクテル。本来の風味を活かし、さらにジュースなどの味のついた割りものを注いで、新たな味わいを生み出せます。
とても飲みやすく、オリジナリティを楽しむことができるでしょう。バリエーションも豊富で、定番もあり、即興的に作ることもできます。
料理やお菓子に使う
飲むだけでなく、お菓子の香りづけなどにも使えるリキュール。高級感のある風味になるのはもちろん、スピリッツのような高濃度のアルコールを含ませることで殺菌作用も期待できます。
お菓子作りの洋酒はもう必須となっており、ワンランク上の味わいを表現できるでしょう。
リキュールの保存方法
開封後は早く飲んでしまうことが、風味を損なわず楽しめる条件です。蓋をしっかり締めておくことはもちろん、香りを飛ばさないためにも、酸素に触れないよう気を付けましょう。
色も変わってしまうことがあるため、なるべく少量で購入し、冷暗所に保管ののち早めに飲み切るようにしましょう。
まとめ
個性を追求した飲み方ができるリキュール。好みの香りや酸味など、自分に合ったものを見つければ、毎日のご褒美として楽しめるでしょう。
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SYULIP編集部
日本酒ECサイトを運営しているSYULIP(シュリップ)です。 サケディプロマ、唎酒師、ソムリエ、栄養士などのライターが日本酒の楽しみ方、豆知識、おつまみ記事などを発信しています。