超軟水で造った日本酒5選。なめらかでキメの細かい名酒をご堪能ください。
日本酒の品質を決定づける要素の1つが原料となる仕込み水の品質です。
この仕込み水の硬度、つまりミネラル含量は日本酒の味わいに影響を与えます。
ミネラル分は発酵に必要な成分であるため、その昔は日本酒作りに適しているのは硬水だと言われていました。
しかし、醸造技術の発展により、今では軟水ひいては超軟水での酒造りも可能になっています。
この記事では、そんな超軟水を用いた酒造りの特徴と、超軟水で造られたおすすめの日本酒5選を紹介いたします。
超軟水で造る日本酒の特徴
はじめに超軟水という言葉ですが、こちらは明確な定義がありません。
WHOが硬度*0~60の水を軟水であると定義していますが、超軟水については公的な定義はなく、軟水の中でも硬度が低いものを超軟水と呼んでいるのが現状です。
実態としては硬度30〜40以下で超軟水を名乗っている事例が散見されます。
醸造技術の進歩により、現在では水の硬度に関わらず色んな味わいの酒を作ることができるようになりました。その中でも、超軟水で仕込んだ醪は発酵力が弱いため、酸が少なく、なめらかできめの細かい淡麗な日本酒に仕上がる傾向にあります。
全体的に軽快で、どんな人にも飲みやすいものが多いともいえます。
*WHOの定義ではアメリカ硬度が用いられている。
「超軟水の日本酒」5選
山本 純米吟醸(秋田・山本酒造)
日本酒バー・チルラボで飲んだ山本
超軟水である白神山地の湧き水を使用。口に含んだ直後の口当たりが優しく、あとから染み渡る味わいがまたスッと消える様が「水のよう」に感じられる日本酒でした。
日本酒らしい米の旨味と甘み、酸味がおだやかに、しかし確実に感じる日本酒。
「水みたい」でありつつ、誰の口にも馴染む「ジューシーな飲みごたえ」を味わいたい方におすすめです。
▼山本 純米吟醸の詳細はこちら
山本 純米吟醸(山本酒造公式サイト)
八海山 特別本醸造(新潟・八海醸造)
特別本醸造
八海山も実は超軟水を使用しています。仕込み水である雷電様の清水の硬度は39。(八海山の発表ではドイツ硬度で2程度)
先立って現れる澄んだ飲み口と、後味にくるドライな刺激感。食中酒として飲むときに、後味のドライ感が舌に残る料理の味と相殺されることで、水のような日本酒へと印象が変わります。優れた食中酒です。
瀧澤 純米吟醸(長野・信州銘醸)
和田峠の超軟水「黒耀水」を使用。含んだ直後はすっきりと感じられますが、そこからフルーティーな香りとしっかりした甘みが追いかけてきます。
その後、甘みはスッと引いていきますが、アルコールのボリューム感は残るため、澄んだ印象の中にも飲みごたえを感じられる1本です。
▼瀧澤 純米吟醸の詳細はこちら
http://www.takizawa-info.com/Products/jungin.html
小野桜 特別純米(岐阜・山内酒造)
超軟水である小野沢の伏流水を使用。ひとくち含むと、「本当にAlc15%もあるのか?」と思えてしまう軽い飲み口。
そして次に感じるのは何とも表現しがたい、例えるなら泡盛にも似た独特な風味。人によっては雑味ともとれそうな味わいですが、それでいてそのひとクセある味わいがスッと何事もなかったように消えていく様がとても面白い、ユニークな日本酒です。
▼小野桜 特別純米の詳細はこちら
山内酒造のお酒(山内酒造公式サイト)
千古乃岩 純米吟醸(岐阜・千古乃岩酒造)
SYULIPで購入できる180mLサイズの千古乃岩・純吟。
超軟水を謳う日本酒の中でも、ひときわミネラル分の少ない硬度7(アメリカ硬度)の水を使用。
ひとくち飲んで最初に感じるのは、超軟水の澄み渡った飲み口の中にある”繊細な旨み”。その洗練された旨みゆえに、旨みを感じながらも透明感を感じることができ、それは職人芸さながらの見事なバランス感覚。そして最後には、品がよくもキリリとした心地よい後味が軽やかに抜けていく。
口に含んでから後味が消えていくまでの、一連の日本酒体験の完成度の高さは圧巻。ささみのような淡白な料理、ゆずや香草などの香り高い料理、アボカドのような油分の多い食べ物など、さまざまな食材と合わせても一級の食中酒として最高の働きをしてくれます。
水のような軽やかさ・透明感の中に、洗練された日本酒の素晴らしさも感じたいという方におすすめの1本です。ぜひ色んな料理と合わせて楽しんでみて欲しいです。
▼千古乃岩の商品ページはこちら
千古乃岩 純米吟醸ミニサイズ飲み比べセット(SYULIP)
*水のミネラル含量を表す硬度が60以下で軟水に分類(WHO基準)されますが、千古乃岩は硬度7の超軟水が使われています。
千古乃岩 飲み比べセット(岐阜・千古乃岩酒造)
超軟水で作られた日本酒3種類のセット
既に紹介した純米吟醸と、同じく千古乃岩の純米大吟醸と純米酒を加えた計3種の飲み比べセットとして、地酒ECサイトSYULIPにて販売されています。
純米大吟醸は大吟醸らしからぬ落ち着いた香りと、後味にはシャープな切れ味を感じます。バランスの良い純米吟醸と比べると、より引き締まって研ぎ澄まされたような仕上がり。開栓して数日経つとより丸みを帯びて本当の水のようになるという時間的な変化も楽しめます。純米酒はクリアな印象の中にまろやかな味わいと後味の力強さが感じられるお酒です。いずれも食中酒として嗜むときに最高の働きをしてくれるお酒たちです。
超軟水で作られたこれらのお酒はどれも澄み渡った飲み口が根底にありながらも、それぞれ少し違う個性を持っています。そんな3本を1つにしたこのセットを飲み比べれば、超軟水の日本酒の共通点を体感しながら、水以外の造りの違いが味わいに与える影響も楽しむことができます。
とくに料理を楽しむための「清涼感のある日本酒」を探している方には手放しでおすすめできるセットです。
▼千古乃岩の商品ページはこちら
千古乃岩 180ml3種飲み比べセット(SYULIP)
▼「新潟県の名水」水質調査についてはこちら
「新潟県の名水」水質調査結果(新潟県HP)
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ディレクター:卯月りん(Twitter)
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