サウナ前後のお酒の話「最高の1杯の見つけ方」と「知らないと危険な注意点」
サウナとお酒。この2つを組み合わせて楽しんでいる方は多いと思います。
その一方で、「お酒を飲んでサウナに入っていいのか?」「サウナのあとに飲酒する際に何か注意点はないのか?」など、安全面に懸念を抱いている方もいるかと思います。
サウナとお酒を安全に、なおかつ最大限に楽しむためにはどうすればいいのか?
この記事では、全国のお酒好きサウナ愛好家のみなさんに向けて、
・知らないと危険なサウナとお酒の注意点
・サウナと合わせると格段に美味しくなるお酒の特徴
について、サイエンスな視点から解説していきます。
サウナ前の飲酒は絶対にNG
まずは安全面のお話から。大前提として、お酒を飲んだ状態でサウナに入るのは絶対にNGです。
その主な理由は次の2つです。
・血圧の乱高下による不整脈や心臓発作等の危険性
・脱水による熱中症や心筋梗塞の危険性
アルコールは血管を拡張して血圧を下げる働きがあります。そしてサウナにも血管が温まることによる血圧降下作用があります。よって、酔った状態でサウナに入ると血圧が下がりすぎることで意識の消失や不整脈が起きる可能性があり、かなり危険です*1。
また、そこから水風呂に入ると冷えた血管が収縮し血圧が急上昇します。この異常なまでの血圧上昇により心臓発作や脳卒中が引き起こされる危険性もあります*2。
そしてアルコールのもう1つの作用が脱水の促進です。
アルコールには利尿作用があるため、酔えば酔うほど身体の脱水は進み、水を飲んでも水分が吸収されづらくなります*3。さらに、アルコールの分解にも水分が必要なため、体内の水分はますます不足していきます*4。
このような状態でサウナに入って大量の汗をかけば、身体は深刻な脱水状態となり、熱中症になってしまってもおかしくありません。血液から水分が失われたことで血栓ができやすくなり、血管が詰まって心筋梗塞や脳梗塞が引き起こされる恐れもあります*2。
サウナでアルコールは抜けるのか?
ちなみに「サウナに入ってアルコールを抜こう」「2日酔いを解消しよう」という人がいますがこれは効果がありません。
体内のアルコールも、2日酔いの原因であるアセトアルデヒドも汗にはほとんど含まれないからです*3 *5。
飲酒後のサウナは何時間後から?
明確な基準はありませんが、国土交通省の資料が参考になるかもしれません*6。
資料によると、アルコール4mLの分解にかかる時間は1時間とされています。
つまり、ビール350mLにつき3.5時間、ワイン1杯80mLにつき2時間、日本酒1合につき6.8時間で分解されるという計算です。
ただアルコールの分解には個人差があり、資料も入浴に関するガイドラインではないので飲酒した当日のサウナは控えた方が賢明です。
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日本酒のアルコール度数は?お酒を美味しく楽しく飲む方法を伝授します!
サウナ後は飲んでもいい、けど
入浴前とは違い、サウナ後の飲酒は絶対にNGということはありません*。
ただし、注意する点があります。
それはサウナの前後にかけてしっかりと水分補給をした方がいいということです。
前述したように、サウナとアルコールはどちらも身体の脱水を促します。それに、一度アルコールが入ると身体は水分を吸収しにくくなります。そのため、サウナで大量に汗をかいたあとにそのまま多量のアルコールを摂取すれば、危険なレベルの脱水状態になってしまうリスクがあります。
対策としては、まずサウナに入る前と入浴の最中には充分な水分補給を行ってください。
そして、サウナ後は酔いが回る前に汗によって失われた水分と、塩分をはじめとするミネラル分を補給するようにしましょう。
※なんらかの持病や疾患を抱えている人はこの限りではありません。かかりつけの専門医の方とご相談ください。
サウナで最高に美味しくなるお酒の条件とは?
それではいよいよ「サウナのあとに飲んで最高に美味しいのはどんなお酒か?」という、考えるだけでととのってしまうテーマについて深堀りしていきます。
この難問を解くためにまず、「サウナの後のビールはなぜ美味しいのか?」という事について考えます。
ビールといえばサウナのあとに飲むお酒の代名詞。そのビールがなぜサウナによって美味しくなるのかを解き明かせば、どんなお酒がサウナと相性がいいのかわかるはず、というロジックです。
サウナ後のビールが美味いのはなぜか?
この問いにいまのところ明確な答えはありません。ですが、いま現在わかっている知見をまとめると、次の2つの理由が有力です。
・ビールが水よりも喉の神経を強く刺激するから
・ストレス下では苦いものを口にしたくなるから
ポイントは脳に”渇きが癒やされた”と思わせること
喉が渇いているときはいつもより水が美味しいです。のどには水を感じとる神経があり、飲んだ水によってこの神経が刺激され、脳が”渇きが癒されたことの快感”を感じます。
面白いことに、この神経はただの水よりも、ビールによって強く刺激されることがわかっています*7。これがサウナに入ったあと、特にビールが美味しく感じられる主な理由だと考えられます。
炭酸とエタノールが喉の神経を刺激する
ではビールのどんな成分が”渇きの癒し”に効いているのか。
まず確実なのは炭酸とアルコール(エタノール)です。炭酸とエタノールがのどの神経を刺激することで、いわゆる「のどごし」を生み出しているということがわかっています*7。また、ビールの酸味も、炭酸や冷たさの刺激を強めることで渇きの癒やしをより強く感じさせるかもしれない、という説もあります*8。
人はストレス下では苦味を求める
ビールの代名詞ともいえる苦味も、美味しさに関わっていると考えられます。
人はストレスがたまると、苦味のある食べ物を求めることがわかっています。それは身体が本能的に苦味のあるものはストレス解消効果があると認識しているからです*9。
サウナの暑さも、水風呂の冷たさも、身体にとってはストレスです。また、多量の汗をかいて体内の水分が不足した状態も1種のストレス状態といえます。それらのストレスを解消するために人はビールに手を伸ばしたくなるのでしょう。
これらのことをまとめると、サウナに合うお酒には次の4つの成分が必要です。
・エタノール
・炭酸
・酸味成分
・苦味成分
この条件が揃ったものであれば、あとはどんな酒を飲むかは自分の好みに合わせていけばいいと思います。
参考までに、条件を満たす酒にはどんなものがあるのか、例を挙げてみます。
レモンを丸ごと絞ったサワー
ポイントは皮を丸ごと使ったサワーであること。「炭酸+レモン果汁の酸味+皮の苦味」ですべての条件が揃います。
ジントニック
ジンとトニックウォーターの苦味、炭酸、ライムを絞って酸味をプラスするとなおよしです。
日本酒
日本酒は味や香りの幅が広いですが、サウナの後に合う日本酒を考えてみました。
・爽酒といわれるタイプのキレとのどごしの良い日本酒
・樹や柑橘の皮など苦味系の吟醸香がある日本酒
・梅や柚子など爽やかな酸味が引き立ったスパークリング日本酒
・氷をいれて炭酸と割った日本酒ハイボール
・ちなみに、ビールの”のどごし”を感じるための神経が日本酒を飲んだときにも反応することがわかっています*7。
ここで挙げた条件を参考に、自分好みのベストな”サウナの供”を探してみてください。ビールより好きだというお酒が見つかるかもしれませんよ。
サウナの後におすすめな超軟水日本酒
喉の渇きが癒やされたと感じやすいために超軟水(硬度7)の水を使って造られた日本酒セットがおすすめです。
超軟水で造られることにより、口当たりがよく喉をすうっと通ります。そして後味のキレも楽しむことができるため、サウナの後の喉の渇きを一気に癒やすことができます。
「純米大吟醸、純米吟醸、純米酒」の3種類のミニサイズセットのため、気分に合わせて手軽にサウナに持ち込んで楽しむことができますよ。
参考文献
*1 e-ヘルスネット 飲酒のガイドライン 厚生労働省
*2 益田地域医療センター医師会病院
*3 『医者が教えるサウナの教科書』ダイヤモンド社出版
*4 飲酒と脱水について AJINOMOTO
*5 e-ヘルスネット アルコールの吸収と分解 厚生労働省
*6 飲酒に関する基礎教育資料 国土交通省
*7 『味のなんでも小事典 甘いものはなぜ別腹?(ブルーバックス)』講談社出版
*8 キリン未来シナリオ会議
*9 日本成人病予防協会
(制作メンバー)
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ライター:べーさん(Twitter)
ディレクター:卯月りん(Twitter)
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