2021年05月30日

日本一の酒どころ、兵庫県!-1300年前の日本酒を体験-

Writer

蔵ほりっくのぞみ
2019年に日本酒に惚れて以来、暇があれば酒蔵をめぐる生活を送っている。 2020年に日本ソムリエ協会のSakeDiploma、世界最大のワイン教育機関が実施するWSET Sake Level3を取得し、現在はInstagramを中心に日本酒知識を発信中。 同時に日本酒愛好団体「Sake Me Up」を立ち上げ、酒蔵ツアーや日本酒ティスティングイベントも企画。夢は世界中の酒蔵を訪問すること。

前回の記事では兵庫県の中でも灘五郷エリアに焦点を当てて紹介しましたが、日本一の酒どころを誇る兵庫県にはまだまだ魅力的な日本酒がたくさん。

前回記事
日本一の酒どころ、兵庫県!-灘五郷のおすすめ日本酒編-

1分でわかる兵庫県の日本酒の特徴 日本酒の生産量No.1 兵庫県は日本酒の生産量“日本一”を誇る酒どころで、国内生産量の28%は兵庫県で造られています。兵庫県には日本酒酒造りに重要な「米」・「水」・「風土」の条件が全て揃っており、寒造りや生酛(きもと)といった酒造技術も兵庫の地で生まれました。 酒米の王様「山田錦(やまだにしき)」が一番生産されているのも兵庫県。その品質の高さから全国の酒蔵で兵庫県産山田錦が使用されています。 生産量日本一の酒米「山田錦」 灘五郷とは?? Source of photo : 灘五郷酒造組合HP 兵庫の中でも特に酒造りが盛んに行われているのが、灘五郷(なだごごう)と呼ばれる西宮から神戸に続く海岸沿いのエリア。今回は灘五郷の「灘酒」に焦点を当てて、とっておきの日本酒を紹介します。 おすすめの兵庫県灘五郷の⽇本酒5選 櫻正宗 焼稀 協会一号酵母 純米 櫻正宗と協会…

今回は灘五郷以外の兵庫県各地に点在する酒蔵の日本酒を紹介します!

紹介する兵庫県の日本酒MAP

兵庫県日本酒MAP

  • ① 播州一献/山陽盃酒造
  • ② 山廃純米/香住鶴
  • ③ 明石鯛/明石酒類醸造
  • ④ 夢の扉/鳳鳴酒造
  • ⑤ 奥播磨/下村酒造店

日本酒のふるさと、播磨の庭田神社

日本酒は米・米麹(こうじ)・水の3つが主な原料です。麹菌が米のデンプンを糖に変え、酵母がその糖分をアルコールに変えることで造られるお酒が日本酒。

日本酒の発酵過程

日本酒が出来上がるまで

日本酒造りにおいて重要な米麹ですが、米麹を使った日本酒造りに関する最古の記述は約1300年前の奈良時代に編纂された「播磨国風土記(はりまのくにふどき)」と言われています。

播磨国風土記の庭音(にわと)村の一説に、「大神が干し飯を川に浸して柔らかくしていたところ、カビ(=麹(こうじ))が生えたため、この米から酒を醸造し、庭酒(にわき)として神様に奉り、宴をした。」といった記述が残されています。

この庭音村というのは現在の兵庫県宍粟(しそう)市の庭田神社があるエリアのことを指しています。

庭田神社の本殿

庭田神社の本殿。「庭酒神社」と呼ばれていました

庭田神社ぬくゐの泉

庭田神社の裏「ぬくゐの泉」

庭田神社の裏に現在も残っている「ぬくゐの泉」。ここで干し飯を戻したと言われています。

日本酒の発祥地については諸説ありますが、「播磨国風土記」に書かれた一説から、播磨は日本酒発祥地の有力候補とされています。

まずは播磨国風土記をもとに造られた日本酒から紹介します!

播州一献 庭酒純米

播磨国風土記の編纂1300年を記念して、播磨の7蔵から庭酒が発売されました。そのうちの一つが山陽盃酒造によって造られた庭酒(にわき・にわざけ)。

播州一献 庭酒

山陽盃酒造が位置する宍粟市で有名な藤の花と一緒に

通常日本酒の精米歩合は吟醸酒で60%以下、大吟醸酒で50%以下と定められていますが、この日本酒はなんと90%!普段食卓で食べるお米の精米歩合が92%なので、ほとんど飯米と精米歩合が同じということになります。

アルコール度数も11度と日本酒にしてはかなり低めで、「播磨国風土記」が編纂された当時の製法を再現しています。

酵母は庭田神社拝殿前の榊(さかき)の木の枝から分離し、麹菌は本殿前にお供えした甘酒から分離されたものを使用することでより当時の日本酒の味わいに近づけています。

見た目は完全ににごり酒。
穀物やヨーグルト、クリームチーズのような乳製品の香りがあり、味わいは酸味がしっかり!うまみは酸味の後に続いてじわじわと現れてきます。発酵の過程で生まれたきめ細やかな炭酸も感じられ、シュワシュワと心地よく口の中を刺激します。
今の日本酒にはなかなか無い、1300年前の素朴な日本酒の味わい。是非お試し下さい!

山廃純米 香住鶴

兵庫県香美町にある香住鶴(かすみつる)が醸す「山廃 純米」。

日本酒_香住鶴山廃純米

現在造られている日本酒のほとんどは速醸酛という酒母に乳酸を添加する方法が採用されていますが、香住鶴の日本酒は全て生酛(きもと)か山廃(やまはい)で造られています。

生酛と山廃の違い

生酛造りでは乳酸を添加せずに、米や米麹を櫂棒(かいぼう)ですり潰し、自然に乳酸菌が増えるのを待ちます。

この米をすり潰す作業を山卸しといい、山廃はこの「山卸し」を「廃止」した製法。生酛や山廃で造られた日本酒はコクがある複雑な味わいになりやすいと言われています。

クリームチーズやサワークリームのような香りがあり、まろやかな酸とうまみのバランスが良い純米酒。飲めば飲むほど良さが分かってくる日本酒です。常温で飲むのが個人的にはオススメ。
香住鶴は地元で有名なカニ料理に合うように造られているそう。是非合わしてみたい!

福智屋

香住鶴の直売所「福智屋」では幅広いラインナップの日本酒を試飲出来ます。福智屋は香住鶴の創業当時の屋号。

特別純米酒 明石鯛

兵庫県明石市にある明石酒類醸造が醸す「特別純米 明石鯛(あかしたい)」。

日本酒_特別純米酒 明石鯛

2021年「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」金賞受賞、2020年「Kura Master」金賞受賞、2020年「全米日本酒鑑評会」金賞受賞などなど…かなり評価の高い日本酒。

冷蔵庫から出してすぐの温度で飲むと「ライチやパイナップルのような香りがあって美味しい。けど少し苦みが気になるな~」という印象でしたが、40℃程度に温めてみると味わいの変化にびっくり。
苦みは完全に消え、お米のふくよかな味わいが広がります。温めることによってフルーティさは抑えられますが、上質な蒸米の味わいがひたすら心地良い。万人受けする日本酒です。

夢の扉 本醸造

クラシック音楽を聴く日本酒

兵庫県丹波市にある鳳鳴(ほうめい)酒造では音楽振動醸造装置を使用して、音楽を聴かせた日本酒を醸しています。

音楽の振動を直接タンクに与えてもろみを発酵することで酒の分子が細かくなり、すっきりと角が取れた飲みやすいお酒に仕上がるそう。

音楽を聴かせた日本酒造りの様子

鳳鳴酒造で日本酒に聴かせる音楽はクラシックや丹波の民謡など様々。「夢の扉 本醸造」はベートーベンの交響曲第6番「田園」を聴いて、優雅に育ったお酒です。

日本酒_夢の扉 本醸造

まろやかな口当たりで、透明感のある繊細な味わい!これが音楽の力…!
良い意味でクセがない日本酒なので、どんな料理にも合わせることが出来そうです。夢の扉という名前もステキですね。

ほろ酔い城下蔵

鳳鳴酒造の見学施設「ほろ酔い城下蔵」

鳳鳴酒造の見学施設「ほろ酔い城下蔵」はなんと江戸時代から続く酒蔵を整備・改装したもの。歴史ある酒蔵の風格を感じます。

ほろ酔い城下蔵

ほろ酔い城下蔵の見学風景

奥播磨 山廃純米 猪カップ

兵庫県姫路市にある下村酒造店が醸す山廃純米。下村酒造店はなんと酒造りに機械を用いらず、全て伝統的な手造りで、純米酒のみを製造しています。

日本酒 奥播磨 山廃純米 猪カップ

日本酒の色はかなり濃い黄金色

イチジク、アプリコットのような穏やかな香りに加えて、香ばしい穀物や黒糖、はちみつ、しょうゆ等熟成酒のような香りも複雑に絡み合っています。
口に含んだ瞬間に濃厚なうまみとコハク酸!!ボリュームのある日本酒で味わいに深みを感じますが、キレもあるので飲み飽きしません。

一緒に食べたい日本酒おつまみ

日本酒おつまみ

イノシシ料理に合わせると良いとラベルに記載がありますが、生憎イノシシは手に入りませんので代わりにバクテー(豚肉のスパイス煮込み)を作り、ぬる燗にして合わせてみました。

完全に正解。ぬる燗にすることで酸とうまみがさらに調和し、甘みも強調されました。豚肉を口に含んだ後に、クイッと流し込むことで酸味が肉の脂を切ってくれ、また次の一口を楽しむことが出来ます。これぞマリアージュ。単体で飲むより何倍も良さが際立ちます。

ご紹介した銘柄で気になる日本酒はありましたか?

全国的に有名な灘の大手蔵から全量手造りの地酒蔵まで、様々な酒蔵が存在する日本酒の宝庫、兵庫県!兵庫県抜きでは日本酒の歴史を語ることが出来ないくらい、日本酒の発展に貢献してきました。

酒蔵を訪れて、歴史やその蔵の想いを知ることでまた違った側面から日本酒を楽しむことが出来ますよ。

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蔵ほりっくのぞみ
2019年に日本酒に惚れて以来、暇があれば酒蔵をめぐる生活を送っている。 2020年に日本ソムリエ協会のSakeDiploma、世界最大のワイン教育機関が実施するWSET Sake Level3を取得し、現在はInstagramを中心に日本酒知識を発信中。 同時に日本酒愛好団体「Sake Me Up」を立ち上げ、酒蔵ツアーや日本酒ティスティングイベントも企画。夢は世界中の酒蔵を訪問すること。


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