2022年02月01日

奈良県吉野町に新たな清酒ブランドが誕生~その名は「吉野正宗」~

Writer

おさけとおつまみ
仕事をきっかけに日本酒に触れ、その奥深さに魅了されること10年余り。 Instagram( @osake_to_otsumami )で各地の日本酒を紹介しています。 地元・奈良の酒蔵さんの魅力を伝えていきたいと思う今日この頃。

奈良県吉野町。古くから桜の名所として知られてきたこの町に今年、新たな清酒ブランドが誕生しました。その名は「吉野正宗」。

町内のお米の生産者、3つの酒蔵と吉野町が手を合わせ、町をあげて手掛ける新たな取り組み。その背景には町が抱える様々な課題がありました。

今回、SYULIPでは「吉野正宗」のプロジェクトを立ち上げた吉野町役場の担当者にインタビューを実施。町をあげて取り組む新たなプロジェクトを取材しました。

急速に進む過疎化と耕作放棄地の増加

吉野町は奈良県のほぼ中央部に位置する人口6,000人ほどの自治体。銘木として知られる吉野杉の産地として知られるほか、観桜期には関西のみならず全国から多くの観光客が訪れるなど豊富な地域資源を擁する町です。

急速に進む過疎化

様々な資源に恵まれた吉野町。一方で2000年からの20年間で44%もの人口減少と高齢化に直面しており、2040年には70%以上人口が減少すると予測されています。

また、町内は山がちで平地が少ないため耕作面積が小さく、営農に不向きという地理的な制約を抱えています。そのような背景もあり、人口減少や高齢化の進展と合わせて農家数や耕地面積も減少。年々遊休農地が増えているという課題を抱えてきました。

遊休農地の活用としてはじまった酒米の栽培

過疎化や耕地面積の減少に歯止めがかからない中、吉野町が町制施行から70周年を迎えた2018年。遊休農地を活用し酒米を育てるという新たな取り組み「吟のさと酒米育成プロジェクト」が始動しました。

そのお米が「吉野正宗」でも使用されている「吟のさと」という品種。もともとは九州沖縄農業研究センターで開発されたもので、稲のくきの長さが短いため倒れにくく育てやすい特徴のある酒米です。遊休農地で継続的に農業を行っていくのに適していることからこの品種による栽培を始めたのだそうです。

そして誕生した「吉野正宗」

遊休農地を活用してはじまった酒米づくり。最初は酒米を作っていくのに苦労したとのことですが、年々作付面積も増加。本格的に活動のはじまった2015年から2020年には2倍以上の面積で作付けが行われるようになりました。

もともとは遊休農地を活用した酒米でお酒を造り、販売することにフォーカスしておりお酒そのものの魅力を伝えることはあまりしてこなかったそう。

そんななかで「酒蔵の杜氏や蔵元のこと、作付けを担う米生産者のみなさんの顔、街を取り巻く風景など、この活動の背景とストーリーが見えることで、日本酒の価値が高まるはず」ということでデザインを一新。遊休農地を活用した酒米の栽培にとどまらず、お酒を通じて地元の魅力を発信する新たなプロジェクトへと舵を切ることとなりました。

ネーミング・デザインに込められたサステナビリティ

そんななかで始まった今回の「吉野正宗」のプロジェクト。名称の選定にあたっては耕作放棄にちなんだネーミングなどいくつかの案が出たそうですが、お酒らしい『正宗』という名前に、地元である吉野を冠しシンプルでわかりやすい名称に。

「吉野正宗」という日本酒らしい骨太なネーミングとは裏腹にシンプルでスタイリッシュなデザインは様々な候補のなかから飽きが来ないものに。その背景にはこのプロジェクトを続けていけるようにすることで、遊休農地を活用した農業を継続できるようにしたいという思いが込められています。

マーケットインによる商品企画が多い昨今、三次産業の動向に合わせて生産してしまうと流行やイベントの有無などによって作付面積が変動してしまいます。安定してお米を生産できるようにしたいと考えているので単発で終わるようなものではなく、今後継続することを主眼に置いて取り組んでいます。

1回きりの企画ではなく、継続してプロジェクトを継続していきたい。ネーミングやデザインの裏には持続可能なプロジェクトを目指すという強い思いが込められていました。

ちなみに、「八咫烏」を醸す北岡酒造店さんのラベルは緑色。吉野の深い山々、自然豊かな土地を表現。「花巴」を醸す美吉野醸造さんのラベルは桃色で、吉野山に広がる山桜を表現。「猩々」を醸す北村酒造店さんのラベルは青色で吉野の豊かな水の煌めきを表しています。

不安と裏腹に得た大きな支持

Source of photo :クラウドファンディング・プロジェクトページ

2021年9月にスタートした「吉野正宗」のクラウドファンディング。当初は「設定額を達成しないといけないと思っていた(担当者談)」ということで30万円と設定していたところ、瞬く間に目標金額を達成。最終的には目標金額を6倍以上上回る1,945,500円の金額を集めるという結果に。準備を進めていく中でどれだけの成果が上がるか不安だったそうですが、予想を上回る成果をあげることができたことに手ごたえを感じているようです。

役場の担当者の方はこう続けます。

企画として1年目で多くの方に知っていただくことができたと考えています。引き続きこの取り組みを通じてファンが増え、買う人が多くなることで生産量も増加すると考えています。同時に吉野の農業の活性化につながるとありがたいなと考えています。

ふるさと納税の返礼品で

吉野ではぐくまれた酒米を地元の酒蔵が醸し、お酒にすることで遊休農地を活用するとともに町おこしにもつながるこの取り組み。「農業、地域の産業を守るだけでなく新たな価値を生み出していく」そんな日本酒を通じた持続可能な取り組み。SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みが注目される中、自治体と酒蔵が一体となって目指す町おこし。

今回吉野町と町内の酒蔵が手を結び、クラウドファンディングで多くの反響を集めた「吉野正宗」ですが、2022年3月31日まで奈良県吉野町のふるさと納税の返礼品として3銘柄のセットを手に入れることができます。

吉野の魅力が詰まった珠玉の日本酒。この機会に一度試してみてはいかがでしょうか。
※「吉野正宗」が手に入る奈良県吉野町のふるさと納税はこちらから

Writer

おさけとおつまみ
仕事をきっかけに日本酒に触れ、その奥深さに魅了されること10年余り。 Instagram( @osake_to_otsumami )で各地の日本酒を紹介しています。 地元・奈良の酒蔵さんの魅力を伝えていきたいと思う今日この頃。


RANKING

人気の記事

人気の記事