2022年04月30日

スパークリング日本酒を牽引する酒蔵「永井酒造株式会社」とは?

Writer

成澤綾子
東京生まれ東京育ち、日本語と日本酒を愛するフリーランスです。 ライター、編集者、ディレクター業をメインに活動しています。魅力と情報を掛け合わせて伝える文章が得意です。

華やかな味わいと飲みやすさで人気のスパークリング日本酒。近年では厳しい品質基準をクリアしたスパークリング日本酒「AWA SAKE(あわさけ)」も、国内外で高く評価されています。

スパークリング日本酒の可能性にいち早く気づいて開発に乗り出し、業界を牽引してきた酒蔵が群馬県川場村の永井酒造株式会社(以下、永井酒造)です。永井酒造の代表取締役社長で6代目当主の永井則吉さんは、AWA SAKEを普及・推進する一般社団法人awa酒協会の初代理事長としても活動しています。

この記事ではスパークリング日本酒について解説したうえで、永井酒造の挑戦と取り組みを紹介します。

スパークリング日本酒とは「炭酸ガスを含む日本酒」

スパークリング日本酒とは「炭酸ガスを含む日本酒」の総称です。製造方法には発酵の過程で発生する炭酸ガスを利用する方法と、人工的に炭酸ガスを加える方法があります。

スパークリング日本酒の製造方法①瓶内二次発酵方式

日本酒の発酵過程で発生する炭酸ガスは、澱引き後に火入れ(低温の加熱殺菌)をすると消失します。発酵が止まっていないお酒を火入れせず生の状態で瓶詰めし、瓶内でさらに発酵させる製造方法が日本酒における「瓶内二次発酵方式」であり、多くの時間と高い技術が必要です。

スパークリングワインで有名なシャンパンも瓶内で二次発酵をおこなうため、瓶内二次発酵方式は「シャンパーニュ製法」とも呼ばれています。スパークリング日本酒は発酵の途中で発生した炭酸ガスを利用しますが、シャンパンは瓶に充填する際に酵母と糖を加えて炭酸ガスを発生させます。

スパークリング日本酒の製造方法②タンク内二次発酵方式

タンク内二次発酵方式は発酵の過程で発生する炭酸ガスを、密閉されたタンク内で二次発酵させる製法です。通常の発酵タンクでは炭酸ガスの保持が難しいため、特別な耐圧タンクと重鎮設備が必要になります。

一度重鎮したら開栓できない瓶内二次発酵と違い、発酵途中でのガス圧の測定や品質チェックのためのテイスティングも可能です。

スパークリング日本酒の製造方法③炭酸ガス注入方式

発酵過程で発生する炭酸ガスを利用せず、人工的に炭酸ガスを加える製法が「炭酸ガス注入方式」です。市販の炭酸飲料も、この製法でつくられています。手軽に製造できますが、二次発酵方式のスパークリング日本酒に比べると炭酸ガスが抜けやすいです。

また、炭酸ガスを注入した場合は、原材料名として表示する義務が発生します。

永井酒造がスパークリング日本酒にかけた想い

永井酒造_スパークリング日本酒

今でこそ多くの酒蔵が製造しているスパークリング日本酒ですが、永井酒造が開発に着手した2003年はまだ一般的ではありませんでした。

スパークリング日本酒の可能性を信じて挑戦を続けてきた、永井酒造の取り組みについて紹介します。

老舗酒蔵から世界基準の日本酒を目指す

永井酒造代表の永井則吉さんが「世界に通用する日本酒をつくりたい」と考えて入社したのは、今から27年前の1995年。世界各地で愛されるワインと違い、当時の日本酒は国内消費がメインでした。日本酒を世界で流通させるため、永井さんはワイン市場を学びはじめます。

ワイン

そのなかで知ったのは、ワイン業界におけるブランド価値の戦略的向上施策です。有名なワインメーカーは歴史・ビジョン・哲学を大切にし、ストーリー化して発信することでブランド価値を高めてきました。

日本酒にもブランド価値を持たせるために、永井さんは世界に通用する熟成させたヴィンテージ日本酒を考案します。日本酒にも古酒の概念はありましたが、品質管理をしながら時間経過によって変化した味わいを楽しむ「熟成酒」の概念はありませんでした。

ワイン

ヴィンテージワインはあるのに、日本酒には該当するものがなかった

しかし136年の歴史を持つ永井酒造において革新的な考え方は受け入れられず、社内には賛成者がいない状態。なんとか頼み込み、自己責任のもと数十本単位での開発に着手しました。

その後、研究・開発を進める中で「食事と一緒に楽しむヴィンテージ日本酒よりも前に、乾杯のシーンに適したスパークリングワインの役割を果たす日本酒が必要だ」と思い至ります。

まだ日本では誰も挑戦していない、未知の領域への挑戦です。その道のりは長く険しいものでした。

5年で700回の失敗。たった3人の挑戦

永井酒造がスパークリング日本酒の開発に着手したのは2003年です。しかし今回も周囲の理解を得るのは難しく、携わったメンバーは永井さんの兄で当時5代目当主だった彰一さんと杜氏の後藤賢司さん、そして永井さんの3名だけ。

永井酒造

単にスパークリングワインを真似るのではなく「2000年を超える日本酒の歴史を尊重するために純米酒製法を取り入れる」と決意し、研究・開発を進めました。日本酒に新たな価値を生み出し、世界基準に押し上げるための挑戦です。

しかし、さまざまな方法を試みるも成功には至らず、3年間で500回の失敗を繰り返します。ガスが充満している瓶を加熱する際、数千本を爆発させてしまったこともありました。開発は大きく難航し、永井さんはヒントを求めてフランス・シャンパーニュ地方へ渡ります。

永井酒造

研修中のフランスにて

スパークリングワインの最高峰であるシャンパンの製造ノウハウやブランド化のプロセスを学び、関わる人たちの情熱に触れる中で、再挑戦への道筋が見えました。ただ発泡性のある日本酒では世界に通用しないと考えた永井氏は「シャンパンと同じ瓶内二次発酵方式で、きめ細かい泡を生み出す日本酒を目指す」と決意します。

帰国後、さらに2年で200回の失敗を経験。しかし、この200回の失敗は原理を理解したうえでの価値ある失敗でした。2007年に原型となるスパークリング日本酒が誕生し、さらに泡の質を向上させるべく試行錯誤を重ねます。

そして2008年、シャンパンと同じ製法でつくられたスパークリング日本酒『MIZUBASHO PURE』が完成しました。

伝統的な日本酒製法に瓶内二次発酵方式を取り入れた技術において、永井酒造は国際特許や国内製造特許、製品特許を取得しています。

世界初!シャンパン製法のスパークリング日本酒『MIZUBASHO PURE』

永井酒造_スパークリング日本酒

構想から10年、開発に5年の年月をかけて誕生した『MIZUBASHO PURE』。世界で初めて、シャンパンと同じ瓶内二次発酵方式でつくられたスパークリング日本酒です。フランスのトップソムリエが審査をおこなう日本酒コンクール「Kura Master」のスパークリング部門では、2020年度の最高位プラチナと審査員賞に選出されました。

永井酒造_スパークリング日本酒

きめ細やかな、ひとすじの泡がグラスを彩ります。フルーティーで華やかな香りと、洗練された優雅な味わいが魅力のお酒です。

しかし実はまだ『MIZUBASHO PURE』は完成していません。2008年の発売以降も前年を超える味わいを目指し、毎年バージョンアップを続けています。

永井酒造のスパークリング日本酒で乾杯しよう!

『MIZUBASHO PURE』はもちろん、2022年3月に発売された「MIZUBASHO Artist Series2022」の『Floral Sparkling 2022』もおすすめ。口当たりの柔らかい泡と白桃や林檎のような爽やかな香味で、水芭蕉の可憐な白い花を連想するスパークリング日本酒です。

永井酒造_スパークリング日本酒

永井酒造の華やかなスパークリング日本酒は、なんでもない日を特別な日に。特別な日をもっと特別な日に変えてくれます。ぜひ乾杯のシーンでお楽しみください!

MIZUBASHO PURE: https://www.mizubasho.jp/item_category/pure/
MIZUBASHO Artist Series公式サイト:https://nagaisake.shop-pro.jp/

Writer

成澤綾子
東京生まれ東京育ち、日本語と日本酒を愛するフリーランスです。 ライター、編集者、ディレクター業をメインに活動しています。魅力と情報を掛け合わせて伝える文章が得意です。


RANKING

人気の記事

人気の記事