実は貴重な日本酒「あらばしり」の知られざる魅力を解説
「あらばしり」という日本酒をご存知でしょうか。
日本酒に関する用語として使われている言葉ですが、このお酒は大量生産が難しい貴重な日本酒でありながら、知名度が低くマニアックなお酒という扱いです。
そんな「あらばしり」の魅力を解説していきます。
「あらばしり」とは?
「あらばしり」とは、日本酒造りの工程の中の、醪(もろみ)を酒と酒粕に分ける段階で、最初に抽出される日本酒のことをいいます。
「荒ばしり」と表記されることもあります。最初の段階でしか造ることができないため、量産されるものではありません。
あまり見かけないこともあり知名度も低いですが、酒造りでは大事にされている、とても貴重な日本酒です。
「しぼりたて」や「生酒」との違い
「あらばしり」とは別に「しぼりたて」という日本酒の名前を耳にすることがあるでしょう。
これらはどちらも「生酒」といわれる日本酒のジャンルのお酒です。
通常の日本酒は、その製造工程で、酵素の働きによるアルコール発酵を止めるため、火入れといわれる工程を二度おこないます。
この工程を一度もおこなわずに造られるのが生酒です。
細かい定義はさまざまですが、この生酒の中でも、秋に収穫された新米を使って仕込みをおこない、12月から翌年1月あたりの冬の季節に造られた出来立ての日本酒を「しぼりたて」と呼びます。
さらにその中でも「しぼりたて」の最初に造られる希少な日本酒が「あらばしり」となるのです。
日本酒造りで重要な「搾り」の工程とは?
日本酒造りには「搾り」という工程があります。
酒袋の中に入れた醪(もろみ)を、槽(ふね)と呼ばれる器具の上に置き、圧をかけて搾られることで、日本酒が抽出され造られます。
これは「袋しぼり」ともいわれています。
押し出されて抽出されたものを日本酒として扱っていますが、この工程の中でも、圧をかけずに出てきた最初のもの、徐々に圧をかけて出てきたもの、その後さらに圧をかけて抽出したものとで、微妙な行程の違いによって、日本酒自体の呼び名も変わります。
抽出方法に違いがあるため、繊細な日本酒の味が変わり、こだわりや好みの分かれるものとなっています。
「あらばしり」と合わせて覚えておきたい名称
日本酒は、搾られる段階により、それぞれ名称が異なっています。
搾りの際に、初めに造られるものを「あらばしり」と呼びますが、その後に抽出される日本酒もおおまかに二種類の部分に分けられ呼ばれています。
中取り
「中取り」とは「あらばしり」が造られた後の醪(もろみ)に、少しずつ圧力をかけて搾られた日本酒のこと。
「中汲み」や「中垂れ」ともいわれています。一般的には、日本酒の中でも一番評価の高い部分とされており「あらばしり」と比べ、透明で澄んだ綺麗な酒質が特徴です。
味わいも安定的で落ち着いており、まろやかな味わいが特徴で、香りとのバランスも良いとされています。
また「せめ」と呼ばれるものもあります。
「せめ」とは「中取り」後の醪(もろみ)に強い圧力を加えてさらに搾られる日本酒のこと。
そのため、圧によって濃縮された力強い味わいが特徴です。工程によって味わいが変化する日本酒。
それぞれに特徴があり、日本酒愛好家の、舌を楽しませるポイントとなっています。
「あらばしり」の特徴
あらばしりの大きな特徴は、搾りの工程の際に、圧をかけず、重力により自然に流れ出て抽出されたものであるということ。
他にもこのような特徴があります。
香り高い味わい
抽出の際に圧をかけた搾りの作業をおこなっていないため、繊細でまろやかな味わいが楽しめます。
また、この製造工程で澱(おり)と呼ばれる酒粕がまだ含まれているため、深みがあり華やかな香りが味わえます。
そして、火入れされていないことで、日本酒本来のフレッシュな風味が保たれています。あらばしりらしい香りと味わいだといえるでしょう。
大量生産が難しい日本酒
搾りの工程の際に、酒袋に詰めた醪(もろみ)の重さにより自然にあふれ流れ出した部分が「あらばしり」になります。
そのため、自然と量は限定され、大量生産することが難しくなります。流通する日本酒の中でもとても貴重な部分です。
「あらばしり」と似た日本酒では「しずく搾り」といわれるものもあります。
これは醪(もろみ)の入った袋を吊り下げ、袋の重みでお酒を抽出する方法です。
この方法で造られた日本酒は、斗瓶囲い(どびんがこい)や斗瓶取り(どびんとり)と呼ばれていますが、あらばしりとは違う日本酒の種類です。
澱(おり)によって深められた旨味
「あらばしり」は、圧を加えるような搾り方をしていないため、お酒の中には澱(おり)と呼ばれる酒粕が若干含まれています。
酒粕が含まれていることにより旨味が増し、中取りやせめのような通常の日本酒よりも濃厚な味わいを楽しむことができます。
鑑評会出品酒として出される自慢の日本酒
一般流通は少なくレアな扱いをされる「あらばしり」ですが、新酒鑑評会などの全国的な大会に出品されている姿はよくみられます。
あらばしりは「仕上がった日本酒の一番深い部分の味わいが素直に表現されている」として、各蔵元から自慢の日本酒として出品されるケースが多いのです。
この話題はニュースに上がることもあります。
大量生産していない地酒の魅力
SYULIPでは大量生産していない地酒を、ちょうどいいサイズでセットにして販売しています。
ここでは、代表的な商品を3つ紹介します。
寿月(じゅげつ)|福島県
福島県にある醸造元の「寿々乃井酒造店」は、全国新酒鑑評会で金賞を受賞する、県内外で高い注目を集めている酒蔵です。
福島県の恵まれた自然を生かして造られた「寿月(じゅげつ)」は、華やかな香りを持ちながらも、食事を引き立ててくれる、そっと寄り添ってくれるような日本酒です。
▼「寿月」お水とお米と自然を味わう飲み比べセット
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日本一の清流。日本酒ミニサイズ飲み比べセット|島根県
島根県西部を流れる日本一の清流に輝いた「高津川」。
そんな清流沿いで古くからお酒造りを続けている三つの酒蔵の日本酒を飲み比べることができるセットです。
特徴の違う三種類の日本酒を180mlのちょうどいいミニサイズでお届けします。
▼日本一の清流。日本酒ミニサイズ飲み比べセット
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正雪(しょうせつ)|静岡県
旧東海道の宿場跡が残る静岡県由比町。
この街で造る唯一無二の日本酒が「正雪」です。
香りはふわりと甘くフルーティ。
味わいも上品な甘さがあり、かつシャープでキレの良い口当たり。後味は軽やかでありながら飽きの来ない味わいが特徴です。
そんな「正雪」の純米大吟醸、純米吟醸、純米酒の三種類を、300mlの飲み比べセットでお届けします。
▼「正雪」歴史と文化の薫る、東海道の美酒を堪能する飲み比べセット
https://syulip.com/products/shosetsu
「あらばしり」は日本酒本来の旨味が楽しめる貴重なお酒(まとめ)
あらばしりはその工程により量産されにくく流通上も限定されていますが、それだけ期待ができるお酒ということでもあります。
そして、その期待以上の味や香りを有する質の高いお酒です。
あまり目にすることがないこの「あらばしり」ですが、日本酒が好きならおすすめ。一見の価値ありといえるでしょう。
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SYULIP編集部
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